冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 どこから、なんて言われても分からない。

 最初は、ただの辛い仕事のお客さんだった。

 あの店から助けてくれて、ベッドを貸してくれて、服まで用意してくれて――追いかけてまで来てくれた。

 そうして、何もしないでくれた。
 出て行けと言わないでくれた。

 ダメ。

 自分を止める。

 ダメ、なのだ。

 何て辛い恋をしてしまったのか、自分は。

 好きになるには、余りに大きな壁があったのだ。

 昨日の今日で、どのツラさげてカイトに好きというのか。
 これでは、まるで彼がお金持ちだから好きというようなものである。

 信じてもらえるハズもなかった。

 きっと――彼にさげすまれる。

 ゾッとした。

 そんなことになるくらいなら、死んだ方がマシだった。

 そうでなくても、こんなに辛いのに。

 彼に囲まれて逃げられないメイは、この泣き顔をどこにも持ち出せなかった。

 しかし、逃げ場所が一カ所だけある。

「う…っ」

 メイは、ずるずると座り込んだ。

 顔を覆い隠しながら。

「バカヤロウ…泣くな!」

 声が降ってくる。

 いや、だんだん近くなる。

「泣くなっつってんだろ!」

 今度は、すぐ真横から聞こえた。

 彼までも座り込んでしまったのだ。

 両腕で、まだ囲い込んだまま。

「んなコトより…メシだ! メシ食わねーと、承知しねーからな!」
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