冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 メイは、結局持っている皿を、自分の分にしなければならなかった。

 そんなにおなかはすいていないのに、カイトがじーっと責めるように睨んでいるのだ。

 湯気の立ち上るシチューを、ちょっとよそった。

「まだだ」

 即座にツッコミが入る。

 しょうがなく、もうちょっとよそう。

「んなんで足りっか!」

 がばっと立ち上がって、カイトは皿を寄越せと手を伸ばす。

 そんな。

 メイは、思わずその皿を死守しようとした。

 この上、自分の分まで彼によそってもらった日には、本当に彼女は役立たずになってしまう。

 心を決めて、カイトの手から逃げるように思い切りよそった。

「そーそー…それでいーんだよ」

 ニッ。

 あ…。

 メイは、一瞬目を取られた。

 カイトが。

 目を細めて満足そうに笑ったのだ。

 途端、胸に溢れかえる温かい水。
 その水が、全部『好き』の色をしていた。

 彼女は、慌ててフタをした。
 いまの気持ちを、彼に見られなかったが心配だったのだ。

 しかし、カイトは再び椅子に戻って、そうしてパンを一つ掴んでいた。

 ホッとした。

「あっ!」

 そこで、メイは一つ思い出した。

 ハルコに言われていたのである。

『冷蔵庫にサラダを入れているから』

 慌てて立ち上がると、教えてもらっていた調理場に走り、冷蔵庫を開ける。

 その明かりの中に、ラップをかけたままのサラダがいた。

 ほっとして取ろうとした時。

「バカヤロウ! いきなりいなくなんじゃねぇ!」

 頭の後ろから怒鳴り声が飛んでくる。

 慌てて振り返ると、カイトが怒っていた。
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