冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□4
「あの……お客様…困ります……!」

 通路のところで、女が酔っぱらいに絡まれていた。

 これがもう、暗がりでも分かるスケベ親父で、下卑た笑いを浮かべながら「いいじゃないか、ちょっとくらい」と、下着姿の女に触ろうとしていた。

 こんなジジィが来るような店で、あの女が。

 早足でボックスに帰る途中、カイトはまたイヤな想像をしてしまった。

 ハライセに、通りすがりにその親父の脚をけっ飛ばす。

「あぎゃあっ!」

 情けない悲鳴を上げて、オヤジは飛び上がった。

 そのまま、行ってしまおうとした。

 が。

「お客様!」

 驚いた声があがったのだ。

 その、オヤジに絡まれていた女から。

「ん?」

 反射的に振り返った。

 いたのは――あの女だった。

 あのチョコレート色の目、だ。

 カイトが、おとなしくボックス席にいろといっていた女が、通路なんぞに出てきていたのである。

 彼の席はもっと先で、そこを見ると無人だった。

「何してやがんだ!」

 フラフラと。

 あの距離を、このオヤジに引きずり出されたとも思いがたい。

 自分で出てきたに違いないのだ。

 そこを、オヤジに絡まれて――

「バカヤロウ!」

 彼女の腕を掴んで連れて行こうとすると、彼女が大荷物を抱えているのに、そこでようやく気づいた。

 カイトの上着とアタッシュケースである。

 何で、んなの持って。

 まばたきをしながら、もう一度彼女を見た。

 その時――
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