冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「え…あ、よかったら部屋に戻ってらっしゃってく…」

 彼女は、最後まで言えなかった。

 当たり前だ。

 カイトが、ギロリと睨んだのだから。

「あと4分45秒」

 カイトは頬づえをつきながら言った。

「…!」

 メイは、スタートボタンを押したように動き出した。

 まず自分の皿を調理場の方に持っていき、戻ってくるなりカイトの皿を片付け始めたのだ。

「オレのは…」

 しなくていー。

 言おうと思ったのに、メイの頭にはもう残りタイムしかないようで。

 カシャンカシャンと手早く重ねてしまうと、バタバタと調理場の方に消えていくのだ。

 あんなに早く動けるとは思っていなかったカイトは、言いかけた途中の言葉を失ったまま席に取り残された。

 ふぅっ。

 開けた口を閉じるだけでは芸がなく、カイトは吐息をついた。

 本当なら。

 カイトは、今頃まだ仕事をしているだろう。

 時計はまだ夜の8時くらいで。

 これから、彼はこの家で何をすれば時間をつぶせるか分からなかった。

 深夜2時よりも早く眠れないカイトの体質からすれば、あと6時間も空白の時間があるのだ。
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