冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ツルツルのキラキラのキュキュッと音がして、顔が映るくらい綺麗に皿を洗い上げて、メイは食器乾燥機に入れた。

 でも、扱い方が分からない。

 やっぱり出す。

 使い慣れないものを使って、壊しでもしたら大変だからだ。
 明日、ハルコに使い方を聞こうと思った。

 思いながら、かけてある白いふきんを取る。

 お皿を回しながら、水分をふき取って流しの横に重ねる。

 どこにしまったらいいのかも、まだ彼女は知らなかったのだ。

 もう一度、最後にぎゅっと蛇口のしまり具合を確認して、別の台拭きで流しの中を拭き始める。

 ハルコがあんなに綺麗にしていたのである。

 彼女が使った後は、余計に手間がかかるとか思われたくなかったので、一滴も残らないくらいに拭き上げる。

 いい、かな?

 メイは、流しの中をのぞき込んだ。

 しかし、彼女の手はまだ濡れたままだった。
 タオルを探そうとキョロキョロとした瞬間。

 あっ!

 メイは驚いた。

 カイトが、壁によりかかってこっちを見ていたのである。

 ギクッとしてしまう。

 ついつい嬉しくて、一生懸命になって、彼との約束の時間を忘れていたのである。

 きっと、タイムリミットを告げにきたのだ。
 いや、とっくに過ぎてしまっていたに違いない。

「ご、ごめんなさい!」

 慌てて、メイは頭を下げた。

「あやまんな…」

 ぶすっっっ。

 すごく不機嫌そうに、そう言う。

 でも怒鳴るじゃなかった。

 逆に、彼がとても怒っているように思えて悲しくなる。

 一つ役に立てたと思ったら、すぐこれだ。

「気は…済んだのかよ」

 そのグレイの目が、横を向く。

 うまく言葉が言えないかのように、唇の端が歪んでいる。

「はい…ありがとうございました」

 きっと、この人はとても損をしているのだと、メイは思った。
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