冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 メイが側まで来たのが分かった。

 バン。

 ドアを開けた。

 つい無意識に、いつものように上着を脱ぎ捨てた。

 ばさっとそのまま床に落として。
 それからぶらさげたままのネクタイを引っ張って落とす。

 シャツのボタンを3つまで外したところで、このまま自分がここで服を脱ぐつもりだったことに気づいた。

 クセとは怖いものだ。

 慌てて手を止めて、後ろから入ってきたメイを振り返る。
 すると、彼女は落ちている上着を拾っているところだった。

 だっと踵を返して、カイトは彼女の目前に迫った。

「え?」

 いきなりの突進に、面食らったメイの手から、バッと上着を奪い取る。

 まだ、全然彼女は分かっていなかった。

 こういう場合は、放っておけばいいのである。

 そんなことが出来る性格じゃないのを、カイトは分かりかけてはいたけれども、つい自分勝手な希望を通したくなるのだ。

 カイトは、ネクタイも拾った。

 そのまま、ベッドの上に投げつけるように飛ばした。

 いきなり、持っていた上着がなくなったメイは、まだその変化についていけないようで、びっくりしたまま手を見ている。

 しかし、カイトの方は別の意味でビックリしていた。

 驚きの余り、固まってしまう。

 見てはいけないものを見てしまったのだ。

 ベッドが。

 いや、そのベッドはカイトのもので、朝と同じ形だった。

 だがしかし。

 枕が二つになっていたのである。

 そして、毛布も余計に増えていた。もう1人分。

 さぁーっっ。

 カイトの血が一気に足元まで落ちる。

 ここで、ようやく思い出したのだ。

 ハルコに、着る物を買ってこいと言ったところまではいい。

 けれども、一つ言い忘れていた。

 客間の準備をしろということを、だ。

 まさか、まさか、まさかーっっっ!!!!

 冷や汗がダラダラ流れて来る。

 ハルコは、もしかして2人の関係を、物凄く勘違いしているのではないだろうか。
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