冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そういう関係じゃないとは言わなかったが、そういう関係とも言ってない。

 ということは、彼女が自己判断でそういう風に曲解して、枕を――

「あ? あの…」

 ばびゅーんっっ!!!!!

 メイを置いて、部屋を飛び出した。

 最後の望みを託して、客間を覗こうと思ったのだ。

 客間は2部屋ある。
 1階と2階に一つずつ。

 カイトは、手近な2階の客間のドアを開けようとした。

 ガチャガチャッッ。

 カギがかかっている。

 どこかを探せばカギはあるだろうが、この事実で部屋の用意をしていないということが分かった。

 クソッ。

 今度は1階だ。

 思い切り段を飛ばして降りていきながら、カイトはシュウの部屋の前を通り過ぎ、奥の客間のドアを――。

 が。

 やっぱり、カギがかかったままだった。

 ――絶望的だった。

 ハルコは、客間の用意をしなかったのである。

 その代わりに、カイトのベッドに枕と毛布を余計に用意したのだ。

 あんにゃろう…。

 内心で、にっこり微笑む彼女の顔を思い出して、怒りをつのらせる。

 とんでもない勘違いをしてくれたものである。

 日頃は気の利いた女性であるのだが、今回ばかりは大ハズレだ。

 帰りの足取りが重くなった。
 通りすがりにあったシュウの部屋のドアを、八つ当たりにガンとけっ飛ばす。

 しかし、足を止めたりはしなかった。

 ムカムカしたまま廊下を通り過ぎ階段にさしかかる。

 その時に、ようやく後方のドアが開く。シュウに違いない。

 チッ。

 何事かという視線を背中に感じても、カイトは振り返ったりしなかった。

 向こうも声をかけてこなかった。

 階段を上る。

 降りるときの1/10の速度だった。

 部屋に帰りたくなかったのだ。

 今夜の越し方のことを考えると、めいっぱいの憂鬱が襲いかかってくる。
< 142 / 911 >

この作品をシェア

pagetop