冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
あー。
カイトは内心で唸った。
彼女がどういう風に考えたか、分かったからである。
他の女とボックスに入って、もう自分は相手にされなくなったと思ったのだ。
だからカイトの忘れ物を、預けるか届けるかしようと思ったに違いない。
うー……ったく。
頭をガシガシとひっかき回したい。
どうしてこの女には分からないのか、とそういう思いでいっぱいになりかけたのである。
しかし、分かるハズもない。
今日会ったばかりで、その上、彼女は今日が店の初仕事で。
何もかも分かっていないのである。
第一、彼だって自分の心の中にざわめく木々が、竹なのか楠なのかも分かっていないのに。
それを相手に分かれというのはコクすぎる。
「オレぁなぁ……」
唸るように口を開けて。
主張したいことはあったのだ。それはもうたくさん。
ただ、彼の口はそういうことをまっすぐに伝えるには、曲がり過ぎているのである。
しかし、このままではラチが開かない。
カイトは続けようとした。
「はぁ~い…私に用があるってのは……坊や?」
なのに。
彼がいろんな勇気をかき集めて何か言葉を作ろうとした矢先。
素っ頓狂な声が飛んできたではないか。
しかも、彼のことをイヤな表現で形容した。
振り向きザマに、睨み上げる。
ボックスの背もたれに肘をかけるようにして、中をのぞき込んでいるヤツに向かって。
「おめーが、ここのボスか?」
フザケた格好だった。
黒い髪に赤いメッシュ。
露出の激しい服。
しかし、どう見ても女じゃなかった。
図体もデカイし、露出した胸はつるっぺただ。
香水の匂いをプンプンふりまきながら、赤い口紅が笑う。
「そうよ……坊やは?」
手入れされすぎている眉が上がる。
同じ性別かどうか、疑いたくなるくらいにしっかりと化粧をしていたが、すくなくともそこのホステスよりは似合っていた。
「名乗る必要はねぇ」
高飛車にカイトは言い放った。
顎で、ボックスに入って来いと呼びつける。
こんな風に見下ろされながら話をする気はなかった。
あー。
カイトは内心で唸った。
彼女がどういう風に考えたか、分かったからである。
他の女とボックスに入って、もう自分は相手にされなくなったと思ったのだ。
だからカイトの忘れ物を、預けるか届けるかしようと思ったに違いない。
うー……ったく。
頭をガシガシとひっかき回したい。
どうしてこの女には分からないのか、とそういう思いでいっぱいになりかけたのである。
しかし、分かるハズもない。
今日会ったばかりで、その上、彼女は今日が店の初仕事で。
何もかも分かっていないのである。
第一、彼だって自分の心の中にざわめく木々が、竹なのか楠なのかも分かっていないのに。
それを相手に分かれというのはコクすぎる。
「オレぁなぁ……」
唸るように口を開けて。
主張したいことはあったのだ。それはもうたくさん。
ただ、彼の口はそういうことをまっすぐに伝えるには、曲がり過ぎているのである。
しかし、このままではラチが開かない。
カイトは続けようとした。
「はぁ~い…私に用があるってのは……坊や?」
なのに。
彼がいろんな勇気をかき集めて何か言葉を作ろうとした矢先。
素っ頓狂な声が飛んできたではないか。
しかも、彼のことをイヤな表現で形容した。
振り向きザマに、睨み上げる。
ボックスの背もたれに肘をかけるようにして、中をのぞき込んでいるヤツに向かって。
「おめーが、ここのボスか?」
フザケた格好だった。
黒い髪に赤いメッシュ。
露出の激しい服。
しかし、どう見ても女じゃなかった。
図体もデカイし、露出した胸はつるっぺただ。
香水の匂いをプンプンふりまきながら、赤い口紅が笑う。
「そうよ……坊やは?」
手入れされすぎている眉が上がる。
同じ性別かどうか、疑いたくなるくらいにしっかりと化粧をしていたが、すくなくともそこのホステスよりは似合っていた。
「名乗る必要はねぇ」
高飛車にカイトは言い放った。
顎で、ボックスに入って来いと呼びつける。
こんな風に見下ろされながら話をする気はなかった。