冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 その上、タオルで濡れた髪を押さえながらという――心拍数が上がる。

 バッと、カイトは立ち上がった。

 そのまま大股でメイの横をすりぬけると、無言で閉ざされたばかりの脱衣所の扉を開き、そうしてまた閉じた。

 見ちゃいられなかったのだ。

 この壁に守ってもらわなければ、何かが弾けて飛びそうだったのである。

 ハルコの…大バカ野郎。

 そして罵倒するのは、客間を用意しなかったこの家の家政婦である。

 誤解したまま、ハルコは。

 …!!!

 やべぇ、とカイトの頭の中に黄色い信号が点滅した。

 忘れていたのだ。

 ハルコは、亭主持ちで。

 その亭主は――

 ぜってー…今日のこと話してやがる。

 めちゃくちゃイヤな予感にさいなまれながら、カイトは冷や汗をダラダラと流した。

 しかし、それは先の話だ。


 いまの大きすぎる課題は、どうやって無事に今夜を乗り切るか、だった。
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