冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
しかし、ダイニングに興味があるワケではない。
そのまま奥の調理場に向かう。
一瞬、暗闇が口をぱっくり開けているようで怖かったけれども、そこに近付いて手だけを闇の中に入れる。
多分、この辺。
知らない家の、電気のスイッチを探すのは大変だ。
カイトがもたれていた辺りの壁を探って、ようやく電気をつけることに成功した。
よかった。
とか、安心している時間はない。
流しに近付いて、シャツを洗おうと思ったが、元に戻した時に全部シャツが濡れていたら、きっと彼は怪しむだろう。
思い出したのはキッチンタオル。
ダイニングに戻って取ってくる。
2枚引っぱり出し、一枚はたたんでシミのあるシャツの下に当てる。
もう一枚は濡らして、石鹸をつけると――メイは、シミの部分を叩いた。
高校時代、うっかり制服を汚してしまった時、学校でこうやってシミの応急処置をしたのだ。
タンタンと、下に当てている方にシミが移るように叩く。
タオルの位置を変えながら、メイはようやく、気になっていたことを片付けることが出来たのである。
後は…漂白したら落ちそう。
メイは、目の前でシャツを広げて眺めた。薄く残っているような気はするが、ほとんど目立たない。
濡れた部分も最小限で、わずかに色を変えた円で済んでいる。
ほっとした。
よかった。
これで、また着られる。
メイは、ぎゅっとそのシャツを抱きしめた。
彼女がネクタイを締めたそのシャツを、またカイトに着てもらうことが出来るのだ。それが、すごく嬉しかった。
石鹸の匂いと――カイトの匂いが混じっている。
タバコの匂い。
あっ!
その匂いを肺に入れた瞬間、メイは慌ててシャツから身体を引き剥がした。
カイトに抱きしめられているような錯覚がしたのと、自分がそれを知っていることを思い出してビックリしたのだ。
しかし、ダイニングに興味があるワケではない。
そのまま奥の調理場に向かう。
一瞬、暗闇が口をぱっくり開けているようで怖かったけれども、そこに近付いて手だけを闇の中に入れる。
多分、この辺。
知らない家の、電気のスイッチを探すのは大変だ。
カイトがもたれていた辺りの壁を探って、ようやく電気をつけることに成功した。
よかった。
とか、安心している時間はない。
流しに近付いて、シャツを洗おうと思ったが、元に戻した時に全部シャツが濡れていたら、きっと彼は怪しむだろう。
思い出したのはキッチンタオル。
ダイニングに戻って取ってくる。
2枚引っぱり出し、一枚はたたんでシミのあるシャツの下に当てる。
もう一枚は濡らして、石鹸をつけると――メイは、シミの部分を叩いた。
高校時代、うっかり制服を汚してしまった時、学校でこうやってシミの応急処置をしたのだ。
タンタンと、下に当てている方にシミが移るように叩く。
タオルの位置を変えながら、メイはようやく、気になっていたことを片付けることが出来たのである。
後は…漂白したら落ちそう。
メイは、目の前でシャツを広げて眺めた。薄く残っているような気はするが、ほとんど目立たない。
濡れた部分も最小限で、わずかに色を変えた円で済んでいる。
ほっとした。
よかった。
これで、また着られる。
メイは、ぎゅっとそのシャツを抱きしめた。
彼女がネクタイを締めたそのシャツを、またカイトに着てもらうことが出来るのだ。それが、すごく嬉しかった。
石鹸の匂いと――カイトの匂いが混じっている。
タバコの匂い。
あっ!
その匂いを肺に入れた瞬間、メイは慌ててシャツから身体を引き剥がした。
カイトに抱きしめられているような錯覚がしたのと、自分がそれを知っていることを思い出してビックリしたのだ。