冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
一歩。
階段を下りてくる音がした。
さっきまでとは、比べモノにならないくらいゆっくりとした一歩だった。
メイは、唇を噛んで下を向いた。
もう一歩、降りてくる。
また一歩。
それから一歩。
そうしてもう一歩。
一歩。
それが、十回ほど続いた後。
うつむいたメイの視界――すぐ上の段に、裸足の指が見えた。
男の足だった。固そうな親指の爪。
ぐいっ。
片方の腕を取られる。
抵抗なんか出来るハズがない。
メイは、その手にシャツをさげたまま、前に手を持ってこさせられたのだ。
きっと、ハナからバレていただろう。
顔が上げられない。
片腕を取られたまま、止まったままの時間。
お願い…。
メイは、ようやく心にそれが流れた。
お願い…怒鳴ってもいいから…怒ってもいいから…
きらわな……!
震えかけたメイの瞼が、驚きに見開かれた。
腕が。
彼女の腕が、引かれたのだ。
怒鳴り声はなかった。
ただ、食堂に連れて行く時のように、掴んだ腕を放さずに引っ張っていくのだ。
間に、シャツをぶら下げたまま。
顔を上げた。
ストライプのパジャマの背中だった。
その背中を――苦しいくらい抱きしめたかった。
ぎゅうっと抱きしめて、この溢れて止まらない火を、『好き』という言葉に代えてしまいたかった。
彼の背中を見ていると、思いが止められない。
心のドアが閉められない。
でも、出来るハズもなくて。
メイは、ただぐいぐいと彼に引っ張られて行くだけだった。
一歩。
階段を下りてくる音がした。
さっきまでとは、比べモノにならないくらいゆっくりとした一歩だった。
メイは、唇を噛んで下を向いた。
もう一歩、降りてくる。
また一歩。
それから一歩。
そうしてもう一歩。
一歩。
それが、十回ほど続いた後。
うつむいたメイの視界――すぐ上の段に、裸足の指が見えた。
男の足だった。固そうな親指の爪。
ぐいっ。
片方の腕を取られる。
抵抗なんか出来るハズがない。
メイは、その手にシャツをさげたまま、前に手を持ってこさせられたのだ。
きっと、ハナからバレていただろう。
顔が上げられない。
片腕を取られたまま、止まったままの時間。
お願い…。
メイは、ようやく心にそれが流れた。
お願い…怒鳴ってもいいから…怒ってもいいから…
きらわな……!
震えかけたメイの瞼が、驚きに見開かれた。
腕が。
彼女の腕が、引かれたのだ。
怒鳴り声はなかった。
ただ、食堂に連れて行く時のように、掴んだ腕を放さずに引っ張っていくのだ。
間に、シャツをぶら下げたまま。
顔を上げた。
ストライプのパジャマの背中だった。
その背中を――苦しいくらい抱きしめたかった。
ぎゅうっと抱きしめて、この溢れて止まらない火を、『好き』という言葉に代えてしまいたかった。
彼の背中を見ていると、思いが止められない。
心のドアが閉められない。
でも、出来るハズもなくて。
メイは、ただぐいぐいと彼に引っ張られて行くだけだった。