冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 部屋に戻って、メイを中に引っ張り込むと、ドアをガンと乱暴に閉める。

 そうして――腕を放した。

 彼女は、放されたままの場所で立ち止まっている。
 胸にシャツを抱えたまま。

 ムッ。

 そのシャツに腹が立った。

 そんなものがあったから、メイはあんな真似を。

 グイッとシャツを掴んで引っ張ると、指が追いかけるように、でもすぐに引き剥がされた。
 構わず奪い取ると、そのまま床に投げ捨てる。

 メイは声も出さなかった。
 ただ、慌てた目で追って。

 そうすることも腹立たしかった。

 シャツなんか、どうでもいいだろ!

 また、強く腕を掴む。

 そうして引っ張った――ベッドへ。

 つめてー手ぇしやがって、チクショウ…チクショウ!

 どんなにカイトの体温を分けても、彼女は温かくならないような気がする。
 そう思うと、物凄く腹が立った。

「あっ…!」

 そんな彼女の身体をぐいと引っ張って、ベッドの上に転ばせる。
 ピンクのパジャマの身体が、シンプルなベッドの上に、まるで花を咲かせたようだった。

 それを見ないように、カイトはぱっと視線をそらした。

 別に。

 彼女は裸というワケではないのに。

「あ…あの…っ!」

 ベッドの上で起きあがったのか、彼に向かって声が投げられる。

 しかし、聞かなかった。

 そのまま、カイトはソファに向かったのである。
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