冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「はぁー…」

 メイが眠っていると分かったからなのか。

 カイトはため息をついた。
 肩の力が抜けたような、本当にほっとした息。

 やれやれ、という言葉が後ろにくっつきそうだ。

「やっぱ、ダメだ…」

 呟かれたのは、それだけだった。

 メイは固まったままベッドの上だったけれども、カイトはソファから起きあがると、暗闇の中を器用に歩いていた。

 ガチャ。

 ドアが開けられる。

 廊下につながるドアだ。
 廊下はまだ電気がついていて、彼の姿が一瞬シルエットになる。

 パタン。

 しかし、すぐ閉ざされて、またメイは闇の中に取り残された。

 ダメって…。

 何が?

 彼が最後に残した言葉がひどく気になる。

 悪い予想が、取り巻く闇のように胸にまで忍び込んで来ようとするのだ。

 メイは毛布の自分の身体を抱えた。

 早く帰ってきて欲しかった。
 1人でこんなところにいたくないのだ。


 随分長い時間が経ちすぎて、ついに彼女が座り込んだままうとうとし始めても――カイトは帰ってこなかった。
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