冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「ただの坊やじゃなさそうだけど、アタシはキャッシュしか信じてないの……2千万の高額商品よ」

 髪をかきあげながら、上の方から視線で見下ろしてくる。

 茶化すように、プレッシャーを投げつけるのだ。

 カイトは、一度顔を伏せた。

 大きく吐息をつく。

 音がするくらいに。

 横目で女を見ると、ストッキングの膝と、その上にぎゅっと乗せられたままの拳が震えていた。

「さぁ、もう用事は……」

 済んだでしょ。

 そう言おうとしたに違いない。

 立ち上がろうとしたボスとやらに向かって、カイトは顔を上げた。

 腕を伸ばす。

 ガタッ。

 パチン。

 カイトは。

 彼は――アタッシュケースを膝の上に乗せると、ボスの方に向かって開いて見せたのである。

「奇遇だな……オレも、キャッシュしか信じねーことにしてんだよ」

 話が合いそうじゃねーか。

 全然心にもないことを言いながら、カイトはニヤリと笑った。
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