冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「うー…」

 頭に霞がかかってくる。

 そうだ、これでいいんだ、と心の中の自分が自分に言うけれども、何故それでいいのかはもうどうでもよくなっていた。

 身体がだるい、頭も重い。

 空になったボトル二本を、ガシャガシャとテーブルの上で倒してしまう。

 彼が、よろけたせいだ。

 部屋。

 意識が、そっちに向かっている。

 とにかく、そこに行かなければならないと、酔っぱらい特有の妙な義務感に突き動かされて、彼はフラつく足取りでダイニングを出て階段にさしかかった。

 確か…部屋に。

 すっげー…。

 一歩一歩、引き上げるように歩かなければならないけれども、それを苛立たしく思えもしなかった。

 ただ、のろのろと歩いて登る。

 階段が終わっても、廊下が長かった。
 酔っているせいで、そう感じるのだ。

 すっげー…何か。

 ガチャリ。

 重心を、前に押し出すようにしてドアを開ける。

 パタン。

 後ろ手にドアを放したら、意外に静かに閉まった。

 しかし、部屋は真っ暗だ。

 何か…。

 足はベッドに向かっていた。

 身体は、垂直でいることを疲れ過ぎていて、いまにも伏してしまいそうだ。

 ベッドの上には。

 卵があった。

 暗くても、シルエットでそれだと分かる。
 毛布で出来た卵。

 ああ…。

 カイトは、目を細めた。
 ベッドにヒザをかける。

 すっげー…大…な…。

 一瞬で。

 意識が墨の中に沈んだ。
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