冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 彼の下から這い出る。

 だが、広いベッドであるにも関わらず、触れあえないほど遠くに離れることが出来なかった。

 暖房は効いているが寒くないようにと、とにかく自分がくるまっていた毛布だけを何とかはがして、彼にかける。

 カイトは全然起きる気配がない。

 明かりを消して、同じ毛布の中にもぐりこむ。

 やっぱり起きる気配はなかった。

 もう少し。

 あとちょっと。

 彼が酔って眠っているのをいいことに、メイはあの時に出来なかったことをしたのだ。

 おずおずと。
 同じ毛布にくるまって、カイトの身体を抱きしめる。

 もうちょっとだけ…起きないで。

 お願い。

 彼女は、それを願った。
 本当はしてはいけないこと。
 それは分かっているのだ。

 想像とは、違った。

 想像よりも、カイトの身体は固い。

 それに、空想の時のように腕がうまく回せない。
 すぐ側に顔があって、心臓が破れそうなくらいドキドキしていて、直視できない。

 こんなこと。

 いけないのに。

 でも、抱きしめたかった。それはもう、自分でも信じられない勇気と衝動。

 そんな時。

「うー…」

 カイトが唸った。

 心臓が飛び跳ねて、彼から慌てて逃げようとした。
 もしもいま起きられたら、何の言い訳も出来ないだろう。

 しかし、毛布をはねのけるように動いた腕が、彼女の身体を捕まえた。

「あっ…」

 思わず洩れた自分の声に後悔を覚えるヒマもなく、メイは強く抱きしめられていた。
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