冬うらら~猫と起爆スイッチ~
12月-1

12/01 Wed.-1

□39
 ふにゃっ。

 カイトは、枕を抱えていた。

 羽根枕はとても柔らかい。

 朝、たまにそれを抱え込んで眠っていた自分に気づいて、恥ずかしい思いをするのである。

 枕を抱いて眠るなんて、まるで乳臭いガキのようだ。

 しかし、寝ている時の自分のコントロールなんか出来るハズもなく。

 そういう時は、目覚めると頭の下にない枕を、ムカついてベッドの外に投げ捨てるのである。

 昨夜も一つ投げ捨てた。

 理由は、いつものとは違ったけれども。
 カイトの眠れる意識の中で、それは夢のように思い出された。

 溶けかけたスノウマン。
 力無い枕の後ろ姿。

 そして。

 また、枕を抱えているだろうことに、自分の意識が気づいた。

 う…。

 眉を動かして、カイトは一番嫌いな目覚めがやってきたことに気づく。

 朝は強い方じゃない。
 昨日はほとんど眠れなかったから早く起きたが、今日は。

 昨日は?

 何故、自分がほとんど眠れなかったのか、いまの彼のCPUでは理由を検索出来なかった。

 まだ大部分がスリープ状態なのだから。

 ただ、抱えている枕をひきはがして。

 腕を外し、その手で自分の顔を触る。

 手の影で、度か彼は瞼を動かした。

「ふー…」

 そのまま、前髪を吹き上げるように上に向かって呼吸を吐くと、カイトはようやく目を開けた。

 見えるのは、自分の手のひら。
 近すぎて、生命線もブレまくっている。

 その手を近づけて、顔をこすって。

 別に猫ではないのだから、そんなことで顔が洗えるワケではないのだが、掴むようにこめかみに握力をかけると、少し意識がはっきりするような気がするのだ。

 そこで、頭が少し痛いことに気づく。

 寝起きだからだ。

 カイトはそう思って、ようやく顔から手のひらを離した。

 瞬間。

 カイトは、トム&ジェリーのトムになった。

 シッポの毛まで逆立てて、目を飛び出させたのである。

 悲鳴が出なかったのは、不幸中の幸いだった。
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