冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 どうしようと、もう一度心で呟く。

 どうし…あれ?

 メイは、力無い自分の指先を見つめたまま、そう思った。

 いや、指先に異変があったワケではない。

 ただ。

 少しの違和感が。

 何だろう?

 その感触が分からずに、彼女は顔を上げた。

 キョロキョロとしてみた。

 異変は何もない。

 ただ、カイトがドアのところにいるだけである。

 いまにも出ていきそうに、彼女に背中を向けたまま。

 おかしいことなど――あれ?

 メイは、眉を寄せた。

 カイトが、いるのだ。
 背中を向けているけれども、ドアのところにいた。

 それが、何よりの違和感だと分かったのだ。

 彼の性格が、せっかちだとか短気だとか、人よりも時計の回りが早いとか、そういうことはメイにも分かりかけていた。

 そんな彼が、まだドアのところにいるのである。

 カイト時間で動いているなら、もうとっくにドアの向こうにいるハズだ。

 なのに、ドアが開く音も閉まる音もしなかった。

 彼が、グズグズしている。

 メイは、じっと目をこらした。

 見れば、カイトは上着の内ポケットを探っていた。
 何か、小さな声でブツブツ言いながら。

 大事なものでも探しているようである。

 ああ。

 だからね、とメイは納得した。

 出かける時に、何か必要なものを忘れると大変だ。
 彼女だって、玄関口で何度となく鞄を開けて中身を確認した記憶がある。

 それと同じ現象なのだ。

 えっと。

 そうして、またメイは戸惑いを続けた。

 指先を見る。
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