冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
あ、どうしよう。
あとちょっとでネクタイは締め終わるけれども、いま開けられたら。
こういう現場を、あののっぽのシュウという男に見られたら。
ただでさえ誤解されているのに。
緊張が走ると、途端に指先が悪い魔法にかけられる。
うまくネクタイが掴めない。
最後の通しがうまくいかずに、メイはもたついた。
それで更に胸がドキドキする。
ガチッ。
そういう金属音がした。
何か分からなかったけれども、とにかく慌ててネクタイと格闘する。
「カイト…いるんでしょう?」
返事のないドアに、指がかかるような音がした。
ああ。
ようやく最後の通しが出来たけれども、ここからきゅっと襟元まで詰めなければならない。
開けられる――間に合わない。
メイは、悲鳴のようにそう思った。
が。
ガチャガチャッ!
ドアノブは回されたようだが、ドアは開かなかった。
ただ無情な、ロックの音を立てるだけである。
あっ!
メイは、ぱっと顔を上げた。
そこには、カイトの目があるはずだった。
彼は――仏頂面で斜め上を向いている。
だから、メイと目が合うことはなかった。
ひん曲がるように閉ざされた口。
眉がイライラしている。
メイは、分かった。
彼が、さっき後ろ手でドアのカギを閉めたのだ。
あ、どうしよう。
あとちょっとでネクタイは締め終わるけれども、いま開けられたら。
こういう現場を、あののっぽのシュウという男に見られたら。
ただでさえ誤解されているのに。
緊張が走ると、途端に指先が悪い魔法にかけられる。
うまくネクタイが掴めない。
最後の通しがうまくいかずに、メイはもたついた。
それで更に胸がドキドキする。
ガチッ。
そういう金属音がした。
何か分からなかったけれども、とにかく慌ててネクタイと格闘する。
「カイト…いるんでしょう?」
返事のないドアに、指がかかるような音がした。
ああ。
ようやく最後の通しが出来たけれども、ここからきゅっと襟元まで詰めなければならない。
開けられる――間に合わない。
メイは、悲鳴のようにそう思った。
が。
ガチャガチャッ!
ドアノブは回されたようだが、ドアは開かなかった。
ただ無情な、ロックの音を立てるだけである。
あっ!
メイは、ぱっと顔を上げた。
そこには、カイトの目があるはずだった。
彼は――仏頂面で斜め上を向いている。
だから、メイと目が合うことはなかった。
ひん曲がるように閉ざされた口。
眉がイライラしている。
メイは、分かった。
彼が、さっき後ろ手でドアのカギを閉めたのだ。