冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「…昨夜、私は今日の予定について伝えましたよね?」
なのに。
CPUがエラーでも起こしたのだろうか。
人の拒否を無視して、シュウはあっさりその禁止の柵を踏み越えたのだ。
「人の話を聞いてんのか、おめーは!!!」
またけっ飛ばされてーか!
がっと目を開けて、身を乗り出す。
シュウは、動じる様子もなく運転を続ける。
本当にけっ飛ばされるまで、ポーカーフェイスを崩さないつもりか。
「ちゃんと伝えたようですね、私は…」
彼が何の返事も返さないけれども、反応から了解したのか運転手はそれを呟く。
その後で、ふむ、と考え込むような素振り。
考えてんじゃねぇ!
拳と平手に、わきわきと指がいったりきたりする。
そのこぎれいにまとまった頭を、ブチのめしたい衝動があったのだ。
人がどんな格好しようが、カンケーねーだろ!
と内心で怒鳴るものの、余りに説得力がなかった。
この、窮屈でかしこまってて――要するに、大嫌いな格好で出てきてしまったのだから。
彼だって、自分にあきれ果てているのだ。
クローゼットの中の背広を見た時に、頭によぎった考えに。
カイトは、忘れられなかったのだ。
あの、ネクタイを、彼女に。
しかも、更に彼はバカ野郎だった。
部屋を出ていけずに、ドアのところでモタモタしてしまったのだ。
このまま出て行ったら、わざわざ背広を着たのが無意味になってしまう。
メイは――時間はかかったけれども、彼の気持ちを裏切らなかった。
あの白い指が。
ズクン。
彼女から触れてくる唯一の時間。
その時間が意識によみがえると、カイトは眉間にシワを寄せてしまった。
この…バカらしい感じは何だ。
眉間が更にぎゅっと寄りそうになった時、シュウが勝手に第二の質問を投げかけてきた。
「ところで、話は変わりますが…アタッシュケースはどうしたんです? 昨日から見ないようですが」
それで、彼の気持ちは全て弾けて飛んだ。
気持ちにひたっているヒマなど、このロボットは与えてくれなかったのだ。
「てめーは黙って運転しろ!」
答えられるハズなどなかった。
「…昨夜、私は今日の予定について伝えましたよね?」
なのに。
CPUがエラーでも起こしたのだろうか。
人の拒否を無視して、シュウはあっさりその禁止の柵を踏み越えたのだ。
「人の話を聞いてんのか、おめーは!!!」
またけっ飛ばされてーか!
がっと目を開けて、身を乗り出す。
シュウは、動じる様子もなく運転を続ける。
本当にけっ飛ばされるまで、ポーカーフェイスを崩さないつもりか。
「ちゃんと伝えたようですね、私は…」
彼が何の返事も返さないけれども、反応から了解したのか運転手はそれを呟く。
その後で、ふむ、と考え込むような素振り。
考えてんじゃねぇ!
拳と平手に、わきわきと指がいったりきたりする。
そのこぎれいにまとまった頭を、ブチのめしたい衝動があったのだ。
人がどんな格好しようが、カンケーねーだろ!
と内心で怒鳴るものの、余りに説得力がなかった。
この、窮屈でかしこまってて――要するに、大嫌いな格好で出てきてしまったのだから。
彼だって、自分にあきれ果てているのだ。
クローゼットの中の背広を見た時に、頭によぎった考えに。
カイトは、忘れられなかったのだ。
あの、ネクタイを、彼女に。
しかも、更に彼はバカ野郎だった。
部屋を出ていけずに、ドアのところでモタモタしてしまったのだ。
このまま出て行ったら、わざわざ背広を着たのが無意味になってしまう。
メイは――時間はかかったけれども、彼の気持ちを裏切らなかった。
あの白い指が。
ズクン。
彼女から触れてくる唯一の時間。
その時間が意識によみがえると、カイトは眉間にシワを寄せてしまった。
この…バカらしい感じは何だ。
眉間が更にぎゅっと寄りそうになった時、シュウが勝手に第二の質問を投げかけてきた。
「ところで、話は変わりますが…アタッシュケースはどうしたんです? 昨日から見ないようですが」
それで、彼の気持ちは全て弾けて飛んだ。
気持ちにひたっているヒマなど、このロボットは与えてくれなかったのだ。
「てめーは黙って運転しろ!」
答えられるハズなどなかった。