冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「おい」
カイトは呼んだ。
反応はない。
「おい、こら」
まだ戻ってこない。
ったく。
カイトは、とりあえず側に転がしたままだった自分の上着を掴むと、彼女の肩に羽織らせた。
「あ……」
その感触で、ようやく我に返ったようである。
慌てた顎が、キョロキョロと落ち着かなく、周囲の空気を読もうとする。
しかし、やはり何が起きたかは、全然分かっていないようだった。
「あの…ボス…」
助けを求めるような声で、さっきまで彼女のボスだった方を見る。
カイトにしてみれば、面白くなかった。
そういう声を向けるなら、こっちにだろうが、と理不尽に思ったのだ。
しかし、彼女にとっては、ボスの方が知っている相手であって。
しかも、いままで自分の身を拘束している相手だったのだ。
逆に言えば、ボスの許可がなければ、どこにも行けない身体だったということである。
ボスは、タバコを持ったままの手で名刺を口から取ると、一つ眺めた。
そうして、「へぇ」と言う風に眉を動かして。
「いま、借用書を持ってこさせるわ」
手を叩いて人を呼ぶ。
「あの……ボス」
誰か教えて、と言わんばかりの情けない声が出てくる。
「あー……もう、アタシをボスってよばなくたっていいのよ! まったく」
強引な商談に、負けたような気分を味わわされたのだろう。
バカらしくてやってられないわ、というポーズでボスは言い放つ。
そうしているうちに借用書が届けられる。
中身を確認した後。
「はい……」
カイトに、それは差し出された。
「フ、ン……」
ぴっと乱暴に受け取りながら、ポケットにねじこむ。
「車、呼べ」
帰るぜ。
カイトは、もうここには用はなかった。
上着を着せかけた彼女を立たせると、行きよりもかなり身軽になったまま出ていこうとしたのだ。
「おい」
カイトは呼んだ。
反応はない。
「おい、こら」
まだ戻ってこない。
ったく。
カイトは、とりあえず側に転がしたままだった自分の上着を掴むと、彼女の肩に羽織らせた。
「あ……」
その感触で、ようやく我に返ったようである。
慌てた顎が、キョロキョロと落ち着かなく、周囲の空気を読もうとする。
しかし、やはり何が起きたかは、全然分かっていないようだった。
「あの…ボス…」
助けを求めるような声で、さっきまで彼女のボスだった方を見る。
カイトにしてみれば、面白くなかった。
そういう声を向けるなら、こっちにだろうが、と理不尽に思ったのだ。
しかし、彼女にとっては、ボスの方が知っている相手であって。
しかも、いままで自分の身を拘束している相手だったのだ。
逆に言えば、ボスの許可がなければ、どこにも行けない身体だったということである。
ボスは、タバコを持ったままの手で名刺を口から取ると、一つ眺めた。
そうして、「へぇ」と言う風に眉を動かして。
「いま、借用書を持ってこさせるわ」
手を叩いて人を呼ぶ。
「あの……ボス」
誰か教えて、と言わんばかりの情けない声が出てくる。
「あー……もう、アタシをボスってよばなくたっていいのよ! まったく」
強引な商談に、負けたような気分を味わわされたのだろう。
バカらしくてやってられないわ、というポーズでボスは言い放つ。
そうしているうちに借用書が届けられる。
中身を確認した後。
「はい……」
カイトに、それは差し出された。
「フ、ン……」
ぴっと乱暴に受け取りながら、ポケットにねじこむ。
「車、呼べ」
帰るぜ。
カイトは、もうここには用はなかった。
上着を着せかけた彼女を立たせると、行きよりもかなり身軽になったまま出ていこうとしたのだ。