冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「ちょっと……! そのまんま連れて行く気?」

 ボスが、驚いた声をあげる。

 いくら男物の背広とはいえ、彼女は下着姿で――その上、外はもう11月も終わり。要するに冬なのだ。

 当たり前だろ。

 そういう目で、カイトは見た。

 もう一秒だって、彼女をここに置いておきたくなかったのだ。

「だって……あー、もう信じられないわね」

 オカマは立ち上がると、自分の毛皮を脱ぐなり、彼女に着せかけた。

 それはとても長く、ぱっと見に派手な冬装備にしか見えなくなる。

「ほら……アタシからのセンベツよ」

 そう言って、まだどうしたらいいのか分かっていない彼女の額をこづく。

 カイトはしかめっ面になった。

 これまた、どう見ても彼女に似合わないからだ。

「何よ、その目……タクシーの運転手に妙な目で見られたくないでしょ?」

 なるほどその通りだったので、カイトはそれ以上のコメントをしなかったけれども。

「あの……」

 彼女が何か言おうとする。

 しかし、カイトは彼女の背中に腕を回すと、強引に連れ出したのである。

 もう、あのボスの方を振り返ったりするヒマも与えなかった。

 ランパブを出る。

 あの女が、車までの見送りだった。

「あきれたわ……」

 タクシーの後部座席に乗り込んだカイトに、そう言った。

「おめーんトコの、ボスの格好よりはマシだろ?」

 それが捨てゼリフになった。
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