冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
「ホントに…」
その笑顔が苦笑に変わる。
メイにというよりも、ここにはいないカイトに向けたような、そんな表情だった。
どこででも、言葉の足りない男のようである。
「彼は…カイト君はね…ああ、君って言うと叱られるのよ…でも、社長と呼ぶのは今更だし…」
ハルコが、話を続けようとした時。
コンコン。
調理場のドアがノックされた。
えっと2人同時に顔を向ける。
ドアは開けっ放しだったのだから、今更なノックだったが。
そこには。
男がいた。
けれども、シュウでもカイトでもなかった。
背は高いが、シュウのような細身とはちょっと違った。
しっかりした体つき。
伸ばされた髪は、きれいに後ろでまとめられていて、全然イヤな感じはしない。
大人の男という印象が、笑顔の上から着込まれていた。
「面白い話をしているようだな」
そう言いながら、彼は中に入ってくる。
「あら…いきなり入ってくるのは失礼よ」
しかし、ハルコはまったくもって相手に驚く様子はない。
いや、最初は驚いたがすぐにホッとしたようだ。
顔見知りなのだ。
え、あ…。
「インターフォンは鳴らしたんだが…でも、誰も答えなかった。どうやら、おしゃべりに夢中だったようだな」
ハルコに近寄って、軽いキスを交わす。
ドキン、とした。
しかし、それで分かった。
彼が。
多分、ハルコの――
「やぁ、お嬢さん…初めまして」
メイは鍋の前で戸惑ったままでいると、男の視線が彼女に向かった。
観察されるのかと思ったが、すぐに笑顔に変わって近付いてくる。
含みのない手を差し出されて、反射的に手を出してしまった。
握手の時の大きな手の力に、安心感を覚える。
いい人のような気配が、いっぱいしたのだ。
「ホントに…」
その笑顔が苦笑に変わる。
メイにというよりも、ここにはいないカイトに向けたような、そんな表情だった。
どこででも、言葉の足りない男のようである。
「彼は…カイト君はね…ああ、君って言うと叱られるのよ…でも、社長と呼ぶのは今更だし…」
ハルコが、話を続けようとした時。
コンコン。
調理場のドアがノックされた。
えっと2人同時に顔を向ける。
ドアは開けっ放しだったのだから、今更なノックだったが。
そこには。
男がいた。
けれども、シュウでもカイトでもなかった。
背は高いが、シュウのような細身とはちょっと違った。
しっかりした体つき。
伸ばされた髪は、きれいに後ろでまとめられていて、全然イヤな感じはしない。
大人の男という印象が、笑顔の上から着込まれていた。
「面白い話をしているようだな」
そう言いながら、彼は中に入ってくる。
「あら…いきなり入ってくるのは失礼よ」
しかし、ハルコはまったくもって相手に驚く様子はない。
いや、最初は驚いたがすぐにホッとしたようだ。
顔見知りなのだ。
え、あ…。
「インターフォンは鳴らしたんだが…でも、誰も答えなかった。どうやら、おしゃべりに夢中だったようだな」
ハルコに近寄って、軽いキスを交わす。
ドキン、とした。
しかし、それで分かった。
彼が。
多分、ハルコの――
「やぁ、お嬢さん…初めまして」
メイは鍋の前で戸惑ったままでいると、男の視線が彼女に向かった。
観察されるのかと思ったが、すぐに笑顔に変わって近付いてくる。
含みのない手を差し出されて、反射的に手を出してしまった。
握手の時の大きな手の力に、安心感を覚える。
いい人のような気配が、いっぱいしたのだ。