冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□45
 人ん家に勝手に上がり込みやがってー!!!!

 いつもは、ソウマにそうされてもちっとも腹が立たないのに、今日に限って言えば、憎らしくてしょうがなかった。

 踏んで、踏んで、踏みしいたげても足りないくらいだ。

 しかも、ただの上がり込みではない。

 メイと一緒にいるのだ。

 おまけに、ハルコはいない。
 時間的に考えると、おそらくもう帰ったのだろう。

 となると、2人きりということだ。
 この家に、彼女と2人きりでいたのである。

 ソウマでなかったら、今頃もう殴りかかっていたに違いなかった。
 それくらい、頭に来る事実だったのだ。

「お早いお帰りだな…オレは、てっきり夜中に帰ってくると思っていたんだが」

 ニヤリと口元を歪めながらヤツは笑う。
 女性向けではない、仲間用の表情である。

 さも、からかわんとしている時特有の目だ。

 んなら来るな!

 真理だった。

 カイトがいないと思っていたのなら、ましてやシュウも遅くなるだろうと予測したのなら、何故ソウマはここに来たのか。

 そういう風に言いながらも、実は早く帰ってくるだろうと思っていたのだ――何だとー!?

 何故、今日に限って早く帰ると予測したのか。
 会社に電話でも入れたのだろうか。

 いや、そんなハズはない。

 誰にも早く帰るなどと言ってもいないのだ。

 開発室の連中は知ってはいるだろうが、秘書はまだ仕事をしていると思っているかもしれなかった。

 ということは。

 いや、考えるまでもなかった。

 ハルコが、しゃべったのだ。彼女のことを。

 今朝、ケイタイで釘を刺したが遅かった。

 それが、カイトの二番目に言いたかったことなのだ。
 客間の次に、とにかくソウマにバレることを阻止したかったのである。

 しかし、彼女の答えは。

『あら…いけませんでした?』

 いけませんでした?

 でした?

 過去形じゃねーかー!!

 カイト、真っ青。
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