冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
もう、ハルコはとっくの昔にソウマにしゃべりまくっていたのだ。
遅すぎるどころの話ではなかった。
絶対、何か言われる。
それは、分かっていた。
しかし。
何も、それがいきなり今日でなくてもいいはずだ。
まだカイトは、メイとの生活に何一つ慣れていないというのに、そんな弱い部分にトドメを刺すかのように、この男はデバガメしに来たのである。
「あ…」
しかし、怒りまくっているカイトに、メイが視線と声を向けていた。
反射的に硬直する自分の身体。
一瞬、頭から何もかもが吹っ飛ぶ。
「あ…おかえりなさい」
慌てて椅子から立ち上がりながら、彼女はそう言ったのだ。
おかえりなさい、と。
それは、些細で無意識の一言だったのかもしれない。
しかし、カイトにとっては大きかった。
ずっとこの家にいてくれるような――そんな気がしたのである。
これから毎日、帰ってきたカイトに同じ言葉を投げてくれるんじゃないか、と。
この妄想トリップが、まずかった。
「カイト、『ただいま』はどうした?」
凄く面白そうな目をしたソウマが、口を突っ込んできたのである。
一瞬にして、春の気分がブリザードになる。
「てめー!」
カッとなって、掴みかかる。
相手はまだ椅子に座っていて、珍しくカイトの方の視点が高かった。
そのまま、胸ぐらに手をかける。
「でてけ!!」
客と呼ぶ相手じゃない。
彼はまったく容赦しなかった。
「おいおいおい…」
その胸ぐらの手を払いながら、ソウマは苦笑する。
そうして、テーブルの上にあるものを掲げて見せた。
「せっかく、いいワインが見つかったから一緒に飲もうと思って持ってきたのに、その言いぐさはないだろう?」
まず、食前酒だな。
ソウマは、まったくもって勝手を並べる。
彼が遅く帰ってくると思うのなら、そんなものを持って来ないだろうし――第一、食前酒とは食事の前に飲む酒のことだ。
もう、ハルコはとっくの昔にソウマにしゃべりまくっていたのだ。
遅すぎるどころの話ではなかった。
絶対、何か言われる。
それは、分かっていた。
しかし。
何も、それがいきなり今日でなくてもいいはずだ。
まだカイトは、メイとの生活に何一つ慣れていないというのに、そんな弱い部分にトドメを刺すかのように、この男はデバガメしに来たのである。
「あ…」
しかし、怒りまくっているカイトに、メイが視線と声を向けていた。
反射的に硬直する自分の身体。
一瞬、頭から何もかもが吹っ飛ぶ。
「あ…おかえりなさい」
慌てて椅子から立ち上がりながら、彼女はそう言ったのだ。
おかえりなさい、と。
それは、些細で無意識の一言だったのかもしれない。
しかし、カイトにとっては大きかった。
ずっとこの家にいてくれるような――そんな気がしたのである。
これから毎日、帰ってきたカイトに同じ言葉を投げてくれるんじゃないか、と。
この妄想トリップが、まずかった。
「カイト、『ただいま』はどうした?」
凄く面白そうな目をしたソウマが、口を突っ込んできたのである。
一瞬にして、春の気分がブリザードになる。
「てめー!」
カッとなって、掴みかかる。
相手はまだ椅子に座っていて、珍しくカイトの方の視点が高かった。
そのまま、胸ぐらに手をかける。
「でてけ!!」
客と呼ぶ相手じゃない。
彼はまったく容赦しなかった。
「おいおいおい…」
その胸ぐらの手を払いながら、ソウマは苦笑する。
そうして、テーブルの上にあるものを掲げて見せた。
「せっかく、いいワインが見つかったから一緒に飲もうと思って持ってきたのに、その言いぐさはないだろう?」
まず、食前酒だな。
ソウマは、まったくもって勝手を並べる。
彼が遅く帰ってくると思うのなら、そんなものを持って来ないだろうし――第一、食前酒とは食事の前に飲む酒のことだ。