冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
借金なんて過去がなければ、もしかしたら彼に言ったかもしれないのだ。
『ちょっとだけでもいいから、飲みたいな』
うわー!!
カイトは暴れそうになった。
心の中で、メイがお願いする目で彼を見上げていたからだ。音声まで合成して。
恐ろしく器用な右脳を、今日ばかりはミサイルで木っ端微塵に吹き飛ばしたかった。
「ほら、お前があんまり怖いこと言うから、お嬢さんも飲みたいなんて言い出せないでいるじゃないか…ここは、オレに免じて一緒にワインを楽しもうじゃないか…おっと、この間のカードで勝った権利を、ここで使わせてもらってもいいんだがな」
笑顔だ。
ソウマは、カイトのという名前の嵐の真ん真ん中を横切って、おまけに逆鱗の側に車を横付けするような真似をしてくれた。
一歩間違えば、彼を際限なくキレさせるというのに。
うーあーうぅぅ…。
頭からバリバリとソウマをかじりながら、しかしカイトは、彼の襟首をひっつかんで無理矢理立たせた。
「おっと…」
こりゃあ、ダメか?
ソウマは彼の剣幕にそういう目をしてみせる。
そのまま諦めてもらっても大いに結構だったが、カイトはそうして力技で空けた席に、どすんと座ったのだ。
ココは、オレの席だ!
彼の主張はそれだった。
「メシ食ったら…帰れ」
腹の底からイヤそうなオーラと声を絞り出した。
ソウマは、再び笑顔に変わった。
「ああ、やっとお許しが出たな…すまんが、ワインオープナーを取ってもらっていいかな?」
態度の軟化を知ったのだろう。
隣の席にワインを置きながら、向かいのメイに頼む。
しかし、声に反応したのはカイトで、がたっと椅子から立ち上がった。
ワインオープナーの場所など、彼女が知るハズもないのだ。
それだけじゃなかった。
「勝手に使うんじゃねー」
ギロリ。
睨んで言った言葉は、ワインオープナーのことではない。
メイのことだ。
「おっと…これは失礼したな。カイトが取ってくるから、お嬢さんは座っていていいそうだ」
翻訳すんなー!!
隠し込んでいる言葉が、全部丸裸にされていく感触に、カイトは強く拳を固めたのだった。
借金なんて過去がなければ、もしかしたら彼に言ったかもしれないのだ。
『ちょっとだけでもいいから、飲みたいな』
うわー!!
カイトは暴れそうになった。
心の中で、メイがお願いする目で彼を見上げていたからだ。音声まで合成して。
恐ろしく器用な右脳を、今日ばかりはミサイルで木っ端微塵に吹き飛ばしたかった。
「ほら、お前があんまり怖いこと言うから、お嬢さんも飲みたいなんて言い出せないでいるじゃないか…ここは、オレに免じて一緒にワインを楽しもうじゃないか…おっと、この間のカードで勝った権利を、ここで使わせてもらってもいいんだがな」
笑顔だ。
ソウマは、カイトのという名前の嵐の真ん真ん中を横切って、おまけに逆鱗の側に車を横付けするような真似をしてくれた。
一歩間違えば、彼を際限なくキレさせるというのに。
うーあーうぅぅ…。
頭からバリバリとソウマをかじりながら、しかしカイトは、彼の襟首をひっつかんで無理矢理立たせた。
「おっと…」
こりゃあ、ダメか?
ソウマは彼の剣幕にそういう目をしてみせる。
そのまま諦めてもらっても大いに結構だったが、カイトはそうして力技で空けた席に、どすんと座ったのだ。
ココは、オレの席だ!
彼の主張はそれだった。
「メシ食ったら…帰れ」
腹の底からイヤそうなオーラと声を絞り出した。
ソウマは、再び笑顔に変わった。
「ああ、やっとお許しが出たな…すまんが、ワインオープナーを取ってもらっていいかな?」
態度の軟化を知ったのだろう。
隣の席にワインを置きながら、向かいのメイに頼む。
しかし、声に反応したのはカイトで、がたっと椅子から立ち上がった。
ワインオープナーの場所など、彼女が知るハズもないのだ。
それだけじゃなかった。
「勝手に使うんじゃねー」
ギロリ。
睨んで言った言葉は、ワインオープナーのことではない。
メイのことだ。
「おっと…これは失礼したな。カイトが取ってくるから、お嬢さんは座っていていいそうだ」
翻訳すんなー!!
隠し込んでいる言葉が、全部丸裸にされていく感触に、カイトは強く拳を固めたのだった。