冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□46
 甘いワインなんか持ってきやがって。

 食前酒。

 カイトは、一口飲んだ感想を内心で呟き、隣に睨みを送った。

 ソウマの考えていることが、どうにもこうにも彼を苛立たせるのだ。

 いままでワインを持参したことはあるが、カイトの甘いもの嫌いはよく知っているハズで。

 今回の訪問が、メイをターゲットにしているのだという証拠でもあった。
 推理するまでもない。

 ソウマも、それを隠そうとは思っていない。

 彼が本気で隠せば、シッポ一つ見つけられないに違いないのに。

「おいしい…」

 だが、感想がまったく違う人間がいた。

 メイは、すごく驚いたみたいに、そして嬉しそうに呟く。

 また、見たことのない表情が出てきたが、それは彼が作り出したものではなかった。

「それは光栄だ…なあ、カイトもうまいだろ?」

 ソウマは、グラスを掲げてカイトの方をちらりと見る。

 うまいと思ってないことくらい、最初から知っているくせに、だ。

 フン、とそっぽを向くということで返事をした。

 気に入らねぇ、気に入らねー!!

 カイトには、いつも驚いた顔とか怯えた顔とかするのに、ソウマにはまるで何の警戒感もないかのようだ。

 オレが!

 カイトは、無言でグラスを置くと料理にかぶりついた。

 別に食べたいワケではないのだが、何でもいいから動いていないと、怒りが増幅するような気がしたのだ。

 料理の支度はハルコがしただろうが、最終的な用意はメイがした。
 よそったり、目の前に並べたり。

 またそれで彼女と一悶着やって、結果、ソウマを喜ばせるハメになったのだ。

 オレが連れてきたんだぞ!

 この言葉は、訪問者に怒鳴るようで、実はメイに怒鳴っていた。
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