冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 シュウもカイトも、人の心の柔らかい部分を理解しづらい性格だ。

 会社を設立すると言った時は、いいコンビではあったが、同時に欠点だらけなのは明らかだった。

 人間相手の商売をすると、本当に分かっているかナゾな2人だったのだ。

 シュウは数字を見る。カイトは、ゲームソフトの質を高める。

 どちらも人間相手の商売には、不向きの感があった。

 付き合っていたハルコに、最初の内だけでも2人を手伝わないかと切り出したのは、親心に似ていたというか、兄心に似ていたというか。

 彼女なら、きっとエンジンオイルのように人を回せるだろうと思ったのだ。

 しかし、いつまでも預けておく気はなかった。

 実は。

 ソウマも、実は余り気が長い方ではないのだ。
 表面上の笑顔で、多くの人が勝手に騙されているだけである。

 会社が成功して軌道に乗った途端。
 彼はハルコをさらったのである。

 そんな自分の話は、そのへんで終わりにするとして。

 あのカイトが、女を家に連れ込んだ。

 情報の発信源は――ソウマの愛すべき妻である。

 遅くなった仕事から帰ってきた彼を出迎えたハルコは、最初から目を輝かせていた。

 いつもは静かな彼女のオーラが、「聞いてちょうだい」と騒いでいるのだ。

「カイトが? 本当か?」

 上着をハルコに脱がせてもらいながら、ソウマは驚きの声を上げた。

 カイトに彼女がいるという噂をすっとばして、いきなり女が家にいたというのだ。

 しかも、泊まった気配まで。

「それにね…彼女のためにカードで服なんかを買ってくるように、私に電話までかけてきて」

 どんなに凄い事態か、分かるでしょう?

 ハルコは、本当に嬉しそうだった。

 春遠かった弟のようなカイトに、いきなり降ってわいたピンクの花びら。

 それに、大喜びと言った様子だ。

「カードで…それは」

 その言葉を言っているカイトの姿を想像すると、ついニヤニヤしてしまう。

 カイトのカード――つまり、いい服を買ってこい、という言葉と同義語に聞こえたのだ。
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