冬うらら~猫と起爆スイッチ~
☆
こんな楽しい一大事は、半月くらい前に実は一つあったが、普通なら滅多にない事件だった。
「それだけじゃないのよ」
彼女は、まだ切り札を色々持っているようだ。その一つを見せてくれる。
「何だと? そりゃあ!」
珍しく大声を出してびっくりしてしまった。
カイトが、取るものもとりあえずといった様子で、とんで帰ってきたというのだ。
理由が――メイが泣いたから。
ケンカでもしたのか、どうにも2人はワケありの事態らしい。
しかし、あのカイトが仕事をどうしてきたか知らないが、女のためにすっ飛んで帰ってきたのである。
これは間違いなくホンモノだった。
カイトは、本気なのだ。
いままでの彼の人生をかいま見てきたソウマには、まさしく奇跡のように思える事件だった。
ハルコにも同じように感じられただろう。
「あなたったら…嬉しくてしょうがないって顔してるわよ」
目ざとい彼女に捕まって突っ込まれる。
「それは、お互い様だろう?」
言いながらも、上機嫌になって彼女を抱き寄せる。軽くキスをして。
そうしてハルコを胸に抱いたまま、けれども頭の半分は、その面白いカップルに向けられていた。
「何を…考えてるのかしら?」
間近から見上げてくる唇に、上の空だったお詫びのキスをする。
でも、やっぱり楽しいカップルに意識は捕まったままだ。
「あいつは、明日も早く帰ってきそうか?」
この質問で、きっと何を考えていたのかバレてしまっただろう。
彼の大好きな目の細め方で、ハルコが笑った。
「あら…賭けましょうか?」
少し悪戯めいた言葉に、ソウマは首を横に振る。
「賭けにならないぞ、それじゃあ」
ハハハハハ。
気持ちよく笑ったソウマは、その後すぐにワイン蔵にこもったのだった。
弟カイトと、その彼女への手みやげとして――
こんな楽しい一大事は、半月くらい前に実は一つあったが、普通なら滅多にない事件だった。
「それだけじゃないのよ」
彼女は、まだ切り札を色々持っているようだ。その一つを見せてくれる。
「何だと? そりゃあ!」
珍しく大声を出してびっくりしてしまった。
カイトが、取るものもとりあえずといった様子で、とんで帰ってきたというのだ。
理由が――メイが泣いたから。
ケンカでもしたのか、どうにも2人はワケありの事態らしい。
しかし、あのカイトが仕事をどうしてきたか知らないが、女のためにすっ飛んで帰ってきたのである。
これは間違いなくホンモノだった。
カイトは、本気なのだ。
いままでの彼の人生をかいま見てきたソウマには、まさしく奇跡のように思える事件だった。
ハルコにも同じように感じられただろう。
「あなたったら…嬉しくてしょうがないって顔してるわよ」
目ざとい彼女に捕まって突っ込まれる。
「それは、お互い様だろう?」
言いながらも、上機嫌になって彼女を抱き寄せる。軽くキスをして。
そうしてハルコを胸に抱いたまま、けれども頭の半分は、その面白いカップルに向けられていた。
「何を…考えてるのかしら?」
間近から見上げてくる唇に、上の空だったお詫びのキスをする。
でも、やっぱり楽しいカップルに意識は捕まったままだ。
「あいつは、明日も早く帰ってきそうか?」
この質問で、きっと何を考えていたのかバレてしまっただろう。
彼の大好きな目の細め方で、ハルコが笑った。
「あら…賭けましょうか?」
少し悪戯めいた言葉に、ソウマは首を横に振る。
「賭けにならないぞ、それじゃあ」
ハハハハハ。
気持ちよく笑ったソウマは、その後すぐにワイン蔵にこもったのだった。
弟カイトと、その彼女への手みやげとして――