冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 えっと。

 ワインを持ったまま、メイは玄関ホールにいた。

 いま言われた言葉を考えてはみたけれども、意味なんか分かるハズもない。

 ただ、カイトは本当に彼女に仕事らしきものをさせたくないようで、多分そういうことに絡んだ発言だったのだろう。

 ワインを見た後、階段の上の方を見る。

 あの調子だと、まだきっとカイトは怒っているだろう。

 もうちょっとしてから、このワインを届けようと思った。

 メイは階段を上った。

 足音をたてないようにそっと。

 ハルコが、彼女のために用意してくれた客間は、2階にあった。

 このまま、玄関ホールにいるわけにもいかなかったのだ。

 カイトの部屋の、隣の隣。

 そこが、メイの部屋。

 パタン。

 極力小さな音でドアの中に入ると、メイは電気をつけて、入口側のチェストの上にワインを置いたのだった。


 この部屋のお礼も言わなきゃ――と、思いながら。
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