冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□50
 ざけんな、ざけんな、ざけてんじゃねーぞー!!!!

 ソウマを叩き出して、ドアをバターンと閉じた後、カイトは手当たり次第けっ飛ばしまくった。

 それはもう、思い切りハラを立てたのである。

 原因は、一つだ。

 ソウマが、余りに穿っている推測を彼に聞かせたからである。

 しかも、あんなデタラメな!

 だから彼を叩き出し、こんなに荒れているのだ。

 デタラメにもホドがある内容だった。
 ソウマは、彼がメイにホレてるとか言ったのである。

 だから、この家に連れ込んだのだと。

 んなワケねーだろ!

 カイトは、ソファをけっ飛ばした。

 どうして、あの男はすぐ色恋に結びつけたがるのか。
 そんなに簡単に、愛だの恋だのが、ゴロゴロしているとでも思っているのだろうか。

 じゃあ、何か?

 その言葉を否定するために、カイトは自分の今までの行動を思い返そうとした。

 あんな店に、あの女がいるのがイヤだって思ったのも。
 衝動的に抱きしめてしまったのも。

 あぁ?

 カイトは、怪訝に眉をひそめた。
 自分の思考の流れがおかしかったからである。

 まて、落ちついてもう一回。

 アタッシュケースを手放したのも、借用書を破り捨てたのも、あの店の匂いを消すために風呂に入れたのも、脱衣所中ひっくりかえして、着替えのない彼女にシャツを渡したのも。

 ん?

 カイトは、また思考を止めた。

 やっぱり記憶のたどりかたがおかしいのか、思い通りの結果にならなかったのだ。

 ソファで眠ったのも、彼女に絡んでいたシュウに怒鳴ったのも、ネクタイを解いてしまったのも、ハルコに服を買わせたのも、側においておきたいと思ったのも。

 泣いていると聞いただけで――早く、帰ってしまったのも。

 ……。

 カイトは、顔を顰めた。

 自分のこれまでの行動が、どれもこれも気に入らないのだ。

 どうして、彼の欲しい答えを導き出す情報がないのか。

 ソウマのデタラメをやりこめないといけないのに。
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