冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
カイトは、魂が抜けかかっていた。
服も着替えないまま、ぼーぜんとソファに横になって、天井を見る。
心と身体が、バラバラになっているかのような気分だったのだ。
否定をする心がある。
ソウマの発言に、全て「ノー!」と騒ぎ立てるヤツだ。
けれども、それと逆さまのことをし続けている心がいた。
メイを抱きしめ、大金を払い、借用書を破って家に連れてきて、そうして側においておきたがる身体。
その二つのせめぎあう存在に、初めて同時にカイトは向き合ったのだ。
ワケが分からなくて、頭がショートしそうだった。
いや、もう火花とか煙くらいは出ているに違いない。
数少ない笑うメイが、あの茶色の目が、カイトを見ている。
心の中に、くっきりと彼女の映像が残っていた。
たとえ、同じ空間にいなくても、こんなにも鮮やかだ。
オレは…。
腕を上げて頭を抱える。
いや、いまソファに転がっている体勢を考えたら、顔を覆うという方が正しいのかもしれない。
心のメッキがはがれていく。「ノー!」と書きつづられていくメッキが、パリパリと。
出てきたのは。
黒い石だった。
ずっしりと重く、全然綺麗じゃない。まるで墨で出来たような石。
『こういう石が、本当に中心まで黒いか確認してみたくならないか?』
ソウマの家の居間に、何故か黒い石が飾ってあった。
彼らが結婚してすぐくらいに呼ばれた時の出来事だ。
どうせ中まで真っ黒だぜ、とカイトは最初からバカにしていた。
けれども、ソウマはニヤっと笑って、その石をカナヅチなどの道具を用意してまで割ったのだ。
ガバッ!
カイトは、驚いて飛び起きた。
呆然とした意識と記憶が混同して、いきなり頭の中に現れたものにビックリしたのだ。
黒く汚い石が割れて出てきたのは――チョコレート色の結晶だった。
外側から見ても分からなかったのだが、中には別のものが隠し込まれていたのである。
カイトは、魂が抜けかかっていた。
服も着替えないまま、ぼーぜんとソファに横になって、天井を見る。
心と身体が、バラバラになっているかのような気分だったのだ。
否定をする心がある。
ソウマの発言に、全て「ノー!」と騒ぎ立てるヤツだ。
けれども、それと逆さまのことをし続けている心がいた。
メイを抱きしめ、大金を払い、借用書を破って家に連れてきて、そうして側においておきたがる身体。
その二つのせめぎあう存在に、初めて同時にカイトは向き合ったのだ。
ワケが分からなくて、頭がショートしそうだった。
いや、もう火花とか煙くらいは出ているに違いない。
数少ない笑うメイが、あの茶色の目が、カイトを見ている。
心の中に、くっきりと彼女の映像が残っていた。
たとえ、同じ空間にいなくても、こんなにも鮮やかだ。
オレは…。
腕を上げて頭を抱える。
いや、いまソファに転がっている体勢を考えたら、顔を覆うという方が正しいのかもしれない。
心のメッキがはがれていく。「ノー!」と書きつづられていくメッキが、パリパリと。
出てきたのは。
黒い石だった。
ずっしりと重く、全然綺麗じゃない。まるで墨で出来たような石。
『こういう石が、本当に中心まで黒いか確認してみたくならないか?』
ソウマの家の居間に、何故か黒い石が飾ってあった。
彼らが結婚してすぐくらいに呼ばれた時の出来事だ。
どうせ中まで真っ黒だぜ、とカイトは最初からバカにしていた。
けれども、ソウマはニヤっと笑って、その石をカナヅチなどの道具を用意してまで割ったのだ。
ガバッ!
カイトは、驚いて飛び起きた。
呆然とした意識と記憶が混同して、いきなり頭の中に現れたものにビックリしたのだ。
黒く汚い石が割れて出てきたのは――チョコレート色の結晶だった。
外側から見ても分からなかったのだが、中には別のものが隠し込まれていたのである。