冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□51
 ドクンドクンドクン。

 こめかみが心臓になる。

 いや本物の心臓は、それどころの話ではなかった。

 きまぐれな猫が、片足を乗せている爆破スイッチ状態だ。
 ちょっとでも刺激すれば、何もかもドカン!

 無意識に過呼吸になる自分に気づいた。

 ドアの向こうに、彼女が来ている。
 それだけで、口の中が乾いた。まばたきを忘れた。

「あの…」

 そっと。小さくドアが開く。

 ほんのちょっとだけ。

 カイトが何も答えないものだから、心配になったのか。

 小さな隙間から覗くチョコレ――!!

 BOMB!!!!

 分かった。

 分かった、分かった、分かってしまった。

 何で、自分が彼女を側に置きたがったのか。
 その色を見て、はっきりと分かった。

 心の中の黒い石の中にも、確かにその色があった。
 たったいまの爆発が、彼の石を割ってしまったのである。

 あふれ出た褐色。

 ちゃんと、黒い石の中にあったのだ。

 最初から、きっと最初からカイトの胸の中にもぐりこんでいたのだ。

 オレは。

 ソファの背もたれから、身体をひねるようにドアを見ていたカイトは、やっと思うことが出来たのだ。


 オレは、こいつのことが――好きだ。


 間違いなかった。

 だから、あんならしくないことばかりを、次から次へとやってしまったのだ。

 原点はたった一つのそれだったのである。

 そんな単純なことも、彼は分かっていなかったのだ。
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