冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「ああ、ごめんなさい…勝手に開けてしまって」
カイトが睨んでいるように見えたのだろうか。
ぱっと茶色の目が飛び退いた。
それから、ゆっくりときちんとドアが開く。
彼の心など、微塵も気づいていないメイは、恥ずかしそうにワインを持っていた。
「あ…あの、ワインを持ってきました。ソウマさんが、渡してくれって…」
甘い、赤のワイン。
しかし、彼女の口から他の男の名前が出ただけで、甘い味の記憶よりも、辛い痛みに胸がしめつけられる。
カイトは、ぎゅうっと眉を寄せた。
気づいたからどうなるというのか。
カイトは、たったいま解けたばかりの答えを持って、どうしたらいいのか分からないままだ。
ワインを直接渡した方がいいのか、どこかに置いた方がいいのか――彼が無反応なせいで、メイは戸惑っていた。
落ち着かない首の動きで、きょろきょろする。
ギシッ。
カイトは、ソファから立ち上がろうとした。
じっと。
じっと、彼女を見た。
立ち上がりながら、背もたれのてっぺんに手をついて、身体をひねって。
ずっと、視線を彼女からそらさずにいた。
その行動で、カイトが直接受け取ってくれるとでも思ったのだろう。
メイは、嬉しそうに笑った。
そこで。
カイトは、自分の中が爆弾だらけなのを知ったのだ。
頭のてっぺんからつま先まで、とにかく火薬でひしめいているのを自覚した。
それを爆発させるボタンの群れの中で、さっきの猫がニャオンとのどかに鳴いている。
あくびついでに触ったボタンで、またどこかで爆発が起きた。
立ち上がったままカイトは動けなかった。
彼女を見つめた状態で、これ以上の過呼吸を押し止めるので精一杯だ。
今朝まで自由に出入りしていたカイトの部屋なのに、彼女はちょっと頭を下げると、たたたっと中に入ってきた。
そうして、ソファを隔てたところまで近付いてくる。
まだ呆然としたままなのに。
「はい…」
また――微笑んだ。
ワインを彼に差し出しながら、自分がすごくいいことをしたかのような表情だ。
「ああ、ごめんなさい…勝手に開けてしまって」
カイトが睨んでいるように見えたのだろうか。
ぱっと茶色の目が飛び退いた。
それから、ゆっくりときちんとドアが開く。
彼の心など、微塵も気づいていないメイは、恥ずかしそうにワインを持っていた。
「あ…あの、ワインを持ってきました。ソウマさんが、渡してくれって…」
甘い、赤のワイン。
しかし、彼女の口から他の男の名前が出ただけで、甘い味の記憶よりも、辛い痛みに胸がしめつけられる。
カイトは、ぎゅうっと眉を寄せた。
気づいたからどうなるというのか。
カイトは、たったいま解けたばかりの答えを持って、どうしたらいいのか分からないままだ。
ワインを直接渡した方がいいのか、どこかに置いた方がいいのか――彼が無反応なせいで、メイは戸惑っていた。
落ち着かない首の動きで、きょろきょろする。
ギシッ。
カイトは、ソファから立ち上がろうとした。
じっと。
じっと、彼女を見た。
立ち上がりながら、背もたれのてっぺんに手をついて、身体をひねって。
ずっと、視線を彼女からそらさずにいた。
その行動で、カイトが直接受け取ってくれるとでも思ったのだろう。
メイは、嬉しそうに笑った。
そこで。
カイトは、自分の中が爆弾だらけなのを知ったのだ。
頭のてっぺんからつま先まで、とにかく火薬でひしめいているのを自覚した。
それを爆発させるボタンの群れの中で、さっきの猫がニャオンとのどかに鳴いている。
あくびついでに触ったボタンで、またどこかで爆発が起きた。
立ち上がったままカイトは動けなかった。
彼女を見つめた状態で、これ以上の過呼吸を押し止めるので精一杯だ。
今朝まで自由に出入りしていたカイトの部屋なのに、彼女はちょっと頭を下げると、たたたっと中に入ってきた。
そうして、ソファを隔てたところまで近付いてくる。
まだ呆然としたままなのに。
「はい…」
また――微笑んだ。
ワインを彼に差し出しながら、自分がすごくいいことをしたかのような表情だ。