冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
カイトはぎゅっと唇を閉じた。
すーっと片手を伸ばした。
そこに、メイがいる。
彼の心の中にある褐色の石だ。
それが、こんなに近くにあるのだ。
指を伸ばす。
「…!」
しかし、我に返った。
メイが、伸ばした手にワインの瓶を触れさせたからだ。
そこで初めて、カイトは自分がそれではなく、彼女に触れようとしていたことに気づいた。
同時に。
目を見開く。
自分が、昨日、何と彼女に宣言したかを思い出してしまったのだ。
オレは、おめーに何もしねぇ。
記憶違いでなければ、カイトは間違いなく彼女にそう言った。
なのに、いま自分は何をしたかったのか。
好きだと気づいた途端――何が何でも、メイという女を自分のものにしたい衝動が、はっきりと身体の中に芽生えたのだ。
ワインの瓶を掴むしかなかった。
あの約束をした翌日。
たった一日で、自分はそれを破りかねなかった。
彼女はワインを受け取ったカイトに、だいぶ慣れてきたのだろうか、もう一度微笑みを浮かべる。
こんなに間近で。
「それと…あの…」
その顔が、一回、ぱっと下げられた。
カイトから見えるのは、黒髪の頭。
「あの…お部屋をありがとうございました」
すぅっと、ゆっくりと上げられる顔。
しかし、そのチョコレートの目の中にあったものは――感謝だった。
カイトは、頭をブン殴られたようなショックを覚える。
そうなのだ。
たとえ、どんなにカイトが彼女のことを好きだと自覚したとしても!
はっきり分かって認めたとしても!
メイが、彼に抱いている感情は、感謝なのだ。
カイトはぎゅっと唇を閉じた。
すーっと片手を伸ばした。
そこに、メイがいる。
彼の心の中にある褐色の石だ。
それが、こんなに近くにあるのだ。
指を伸ばす。
「…!」
しかし、我に返った。
メイが、伸ばした手にワインの瓶を触れさせたからだ。
そこで初めて、カイトは自分がそれではなく、彼女に触れようとしていたことに気づいた。
同時に。
目を見開く。
自分が、昨日、何と彼女に宣言したかを思い出してしまったのだ。
オレは、おめーに何もしねぇ。
記憶違いでなければ、カイトは間違いなく彼女にそう言った。
なのに、いま自分は何をしたかったのか。
好きだと気づいた途端――何が何でも、メイという女を自分のものにしたい衝動が、はっきりと身体の中に芽生えたのだ。
ワインの瓶を掴むしかなかった。
あの約束をした翌日。
たった一日で、自分はそれを破りかねなかった。
彼女はワインを受け取ったカイトに、だいぶ慣れてきたのだろうか、もう一度微笑みを浮かべる。
こんなに間近で。
「それと…あの…」
その顔が、一回、ぱっと下げられた。
カイトから見えるのは、黒髪の頭。
「あの…お部屋をありがとうございました」
すぅっと、ゆっくりと上げられる顔。
しかし、そのチョコレートの目の中にあったものは――感謝だった。
カイトは、頭をブン殴られたようなショックを覚える。
そうなのだ。
たとえ、どんなにカイトが彼女のことを好きだと自覚したとしても!
はっきり分かって認めたとしても!
メイが、彼に抱いている感情は、感謝なのだ。