冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 気をつけなきゃ。

 自分を戒める。

 思いは外に出してはいけないキマリなのだ。

 それが、メイの中にある法律。

 でも、何とか隠しきれれば、きっといい家政婦になれるんじゃないかと思った。

 勿論、根拠なんかはない。

 でも、カイトを思う気持ちがあれば、テキパキと能率よく、じゃなくてもゆっくり綺麗に出来そうな気がしたのだ。

 そう思うと元気がわいてきた。

 明日から、ハルコにいろんなことを聞いて、この家のことを知ろう。出来るようになろう。
 通いでは出来ないことが、きっとたくさんあるハズなのだ。

 メイは、張り切っていた。

 たとえば。

 朝ご飯。

 彼らは、朝食を取らずに仕事にいくらしい。

 ハルコも、支度をする時間には出勤してこないから――多分、誰も作らないから食べないのだろう。

 朝食は、大事なのに。

 いつも父親に朝食を食べさせて出かけさせていたメイは、そのころの生活のリズムを身体で思い出そうとする。

 彼らが仕事に出かけたら、ハルコと一緒に掃除とか洗濯とかをしよう。

 この家は広すぎて、毎日通ってるハルコですらローテーションのような掃除しか出来ないらしい。
 メイが手伝えば、きっともっとピカピカにできる。

 布団を干して、気持ちよく眠ってもらおう。

 メイは、まるでママゴトのように、頭の中にいろんなシミュレーションを走らせ始めた。

 ベッドの端に座って、もっともっとシミュレーションを広げようとした時。

 ドンッ。

 まるで、靴の先でドアを蹴っ飛ばしたような音がした。

「は、はい!」

 反射的に背筋がぴょんと伸びる。

 ビックリしたのもあるが、こんなノックをする相手は、きっとカイトだと確信したせいでもあった。
< 239 / 911 >

この作品をシェア

pagetop