冬うらら~猫と起爆スイッチ~
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どう見ても、どう聞いても、目の前にいるのはカイトじゃなかった。
ソウマさんったら、何てひどいことを!
あんないい人を責めたくなかった。
けれども、こんな酷い状態にまでしなくてもいいのである。
あれだけ言葉を上手に扱える人なら、からかう程度だって調整できるハズなのに、と。
メイは、ぎゅうっと眉を寄せた。
「カイ…ト」
彼女は。
今日の夕食までの彼女なら、絶対にそういう呼び方はしなかっただろう。
けれども、こんなに沈んでしまったカイトを、少しでも力づけたかった。
だから、一生懸命頑張ったのだ。
頑張って…彼を呼んだ。
まるで、仲のいい友達のような呼び方。
ソウマは、彼をこう呼ぶだろう。シュウも、多分。ハルコは…ちょっと違ったか。
すごく、心苦しい呼び方だ。
でも、ここで彼女が違う呼び方をしてしまったら、もっとカイトを傷つけてしまいそうで――頑張った。
「カ…イト」
もう一回。
ダメ…。
何だか、泣いてしまいそうになって慌てて顔に力を入れる。
好きが――涙で溢れてきそうになったのだ。
そんなことをしちゃいけないと、自分を必死でコントロールする。
カイトの辛そうな目が、そのまま彼女の表面を撫でる。
「ワイン…大事に飲みますね。ありがとうございます、カイト」
言葉に、織り交ぜてみた。
カイトの沈痛を元に戻したいと思って、わざと明るい口調で。
でも、言葉はひどくちぐはぐだった。
他人なのか親しいのか分からない言葉になってしまって、バツが悪くなる。
けれども。
まるで、2人そのもののようなちぐはぐさだった。
カイトが怒鳴り回っている間、メイは何かとすぐ沈んでいたのに。
メイがやる気になった途端、カイトが沈んでしまったのだ。
天秤の神様は――目が見えないらしい。
どう見ても、どう聞いても、目の前にいるのはカイトじゃなかった。
ソウマさんったら、何てひどいことを!
あんないい人を責めたくなかった。
けれども、こんな酷い状態にまでしなくてもいいのである。
あれだけ言葉を上手に扱える人なら、からかう程度だって調整できるハズなのに、と。
メイは、ぎゅうっと眉を寄せた。
「カイ…ト」
彼女は。
今日の夕食までの彼女なら、絶対にそういう呼び方はしなかっただろう。
けれども、こんなに沈んでしまったカイトを、少しでも力づけたかった。
だから、一生懸命頑張ったのだ。
頑張って…彼を呼んだ。
まるで、仲のいい友達のような呼び方。
ソウマは、彼をこう呼ぶだろう。シュウも、多分。ハルコは…ちょっと違ったか。
すごく、心苦しい呼び方だ。
でも、ここで彼女が違う呼び方をしてしまったら、もっとカイトを傷つけてしまいそうで――頑張った。
「カ…イト」
もう一回。
ダメ…。
何だか、泣いてしまいそうになって慌てて顔に力を入れる。
好きが――涙で溢れてきそうになったのだ。
そんなことをしちゃいけないと、自分を必死でコントロールする。
カイトの辛そうな目が、そのまま彼女の表面を撫でる。
「ワイン…大事に飲みますね。ありがとうございます、カイト」
言葉に、織り交ぜてみた。
カイトの沈痛を元に戻したいと思って、わざと明るい口調で。
でも、言葉はひどくちぐはぐだった。
他人なのか親しいのか分からない言葉になってしまって、バツが悪くなる。
けれども。
まるで、2人そのもののようなちぐはぐさだった。
カイトが怒鳴り回っている間、メイは何かとすぐ沈んでいたのに。
メイがやる気になった途端、カイトが沈んでしまったのだ。
天秤の神様は――目が見えないらしい。