冬うらら~猫と起爆スイッチ~
12/02 Thu.-1
□53
本当は。
本当は、オレは――
自覚が出来た途端、うちのめされる結果となったカイトは、何も出来ない女を目の前に置いていた。
そんな彼女に、「カイト」、と呼ばれた。
んな顔で…。
目を細めて、何でそんなに彼女は切ない顔をするのか。
明るい笑顔を浮かべようとはしているのだろうが、眉間の間にある薄い影と、少し下げられた瞼がカイトを苦しめる。
呼び捨てにするのは、メイにも苦痛があるのだろう。
それでも、そんな表情になってまで彼女は自分を呼んでくれる。
カイトがそう望んだから。
これで、少しは近づけたと思いたかったのに、全然気力は元に戻ってこない。
逆に、沈む一方のような気がした。
何で。
何で抱きしめられねぇんだ?
自分のまいた条件やら宣言やら、いままでのことを思い出して見ても、気づいたらその鎖でがんじがらめになっている。
何度繰り返したところで、同じことだった。
けれども。
どんなにがんじがらめになっても、彼女はそこにいるのだ。
その事実だけは変わらないのである。
たとえ、触れることが出来なくても。
心が震える相手が、同じ家にいる。
おそらく多分、これからも。
カイトが――彼女をひどく傷つけたりしなければ。
そう。
彼が触れない限り、メイはここにいてくれるような気がした。
そうして、『おかえりなさい』と言ってくれるのだ。
いつか、自分も言うことが出来るだろうか。
『ただい…』
ガシャン!
ワインが割れた。
本当は。
本当は、オレは――
自覚が出来た途端、うちのめされる結果となったカイトは、何も出来ない女を目の前に置いていた。
そんな彼女に、「カイト」、と呼ばれた。
んな顔で…。
目を細めて、何でそんなに彼女は切ない顔をするのか。
明るい笑顔を浮かべようとはしているのだろうが、眉間の間にある薄い影と、少し下げられた瞼がカイトを苦しめる。
呼び捨てにするのは、メイにも苦痛があるのだろう。
それでも、そんな表情になってまで彼女は自分を呼んでくれる。
カイトがそう望んだから。
これで、少しは近づけたと思いたかったのに、全然気力は元に戻ってこない。
逆に、沈む一方のような気がした。
何で。
何で抱きしめられねぇんだ?
自分のまいた条件やら宣言やら、いままでのことを思い出して見ても、気づいたらその鎖でがんじがらめになっている。
何度繰り返したところで、同じことだった。
けれども。
どんなにがんじがらめになっても、彼女はそこにいるのだ。
その事実だけは変わらないのである。
たとえ、触れることが出来なくても。
心が震える相手が、同じ家にいる。
おそらく多分、これからも。
カイトが――彼女をひどく傷つけたりしなければ。
そう。
彼が触れない限り、メイはここにいてくれるような気がした。
そうして、『おかえりなさい』と言ってくれるのだ。
いつか、自分も言うことが出来るだろうか。
『ただい…』
ガシャン!
ワインが割れた。