冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「オレぁ、あいつを大事にしてーんだ! あいつを幸せにしてやりてーんだ!」

 カイトは、怒鳴ってから気づいた。

 彼女について、はっきりと自分がそう思っていることに。

 それは、確かに――抱きしめなくても可能なことである。

 抱きしめなくても、メイを幸せにすることは、きっと出来るのだ。

 それどころか、逆に抱きしめてしまったら壊してしまいかねないこと。

 彼女の信用も、向けられる優しい笑顔や言葉も、全て一度に失ってしまうかもしれないのだ。

 そんなことは、許せなかった。

 好きだと思っても。

 抱きしめたりしなければ、ずっと彼女を側に置いておくことができる。
 カイトは、夢の中で怒鳴りながら気がついたのだ。

 それは、きっと苦痛を伴うだろう。

 彼は男で――女を手に入れる方法をいくつも知らないのだ。

 今よりも、もっと欲しいという欲求に押しつぶされそうになったらどうすればいいのか。

 んなこたぁ!

 ソウマを縦に破る。

 笑っていた彼は、いつの間にかポスターになっていたのだ。

 シュウも破る。

 ほぼ縦にまっぷたつみたいになって、力無く足元に落ちた。

「んなこたぁ、やってみなけりゃ分かんねーだろ!」

 傷つけるかもしれないということは、裏返せば傷つけないかもしれないということ。
 それは、カイトの双肩に全てかかっているのだ。

 触れない好きがあっても――いいのだ。

 きっと、このままうまく。

「カイト…」

 メイだ。

 彼女はポスターにはならず、そこに立っている。笑顔で。

 そして、名前を呼んでくれた。

 瞬間、電流が身体に走り抜ける。

「カイト…」

 もう一度呼ばれる。でも、反応出来ない。
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