冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
そこにメイがいるという事実だけで、心が巻き取られていくような気がした。
まるで綿菓子のように、棒にくるくると。
ただ、見つめているしかできない。
夢なら、触れても――
「起きて下さい…カイト」
パチン!
催眠術を解く時に叩かれる、手のような音がした。
カイトはそれにビクッと来て、ばっと目を開ける。
「おはようございます、いいお天気ですよ」
え?
カイトは、がばっと半身を起こしながら今を把握しようとした。
誰がそこにいて、自分に何が起きているのか分からなかったからである。
しかし、見間違いようもなかった。
そこにいたのは、メイで、彼に向かって微笑んでいたのである。
弱い冬の朝日の中で。
な、な、なななな…!!
余りに驚いて、カイトはベッドの上をばっと後ろに飛び退いた。
すぐに行き止まりである。
声は、失われたままだった。
メイが、自分の寝起きを襲ったのだ。
いや、襲ったと言っても、すぐ横に立っているだけだが。
ま、だ…夢ぇ見てんのか?
カイトは、呆然と彼女を見る。
夢なら抱きしめてもいいはずだ。
しかし、彼はいまがどっちなのか分からなかった。
どっちなのかが分かるまで、触るワケにもいかないのだ。
「支度が出来たら、下に降りて来てくださいね…朝ご飯、作ったんです…ありあわせのものですけど」
にこっ。
最後に一回微笑むと、メイはぺこっと頭を下げて部屋を出て行った。
パタン、と。
置き去りにされたカイトは、呆然としたままだった。
とりあえず。
頬をつねってみる。
痛かった。
「夢じゃ…ねぇ」
ようやく、声が出てくる。
起き抜けの掠れた声で、二回せき込んで元に戻した。
いま目の前で起きた現象は、間違いなく本物だ。夢でも幻でもない。
その彼女が、いま何と言ったか。
「朝ご飯…だぁ?」
眉を顰める。
聞き慣れない単語だった。
まだ、キツネに頬をつねられているような気がした。
そこにメイがいるという事実だけで、心が巻き取られていくような気がした。
まるで綿菓子のように、棒にくるくると。
ただ、見つめているしかできない。
夢なら、触れても――
「起きて下さい…カイト」
パチン!
催眠術を解く時に叩かれる、手のような音がした。
カイトはそれにビクッと来て、ばっと目を開ける。
「おはようございます、いいお天気ですよ」
え?
カイトは、がばっと半身を起こしながら今を把握しようとした。
誰がそこにいて、自分に何が起きているのか分からなかったからである。
しかし、見間違いようもなかった。
そこにいたのは、メイで、彼に向かって微笑んでいたのである。
弱い冬の朝日の中で。
な、な、なななな…!!
余りに驚いて、カイトはベッドの上をばっと後ろに飛び退いた。
すぐに行き止まりである。
声は、失われたままだった。
メイが、自分の寝起きを襲ったのだ。
いや、襲ったと言っても、すぐ横に立っているだけだが。
ま、だ…夢ぇ見てんのか?
カイトは、呆然と彼女を見る。
夢なら抱きしめてもいいはずだ。
しかし、彼はいまがどっちなのか分からなかった。
どっちなのかが分かるまで、触るワケにもいかないのだ。
「支度が出来たら、下に降りて来てくださいね…朝ご飯、作ったんです…ありあわせのものですけど」
にこっ。
最後に一回微笑むと、メイはぺこっと頭を下げて部屋を出て行った。
パタン、と。
置き去りにされたカイトは、呆然としたままだった。
とりあえず。
頬をつねってみる。
痛かった。
「夢じゃ…ねぇ」
ようやく、声が出てくる。
起き抜けの掠れた声で、二回せき込んで元に戻した。
いま目の前で起きた現象は、間違いなく本物だ。夢でも幻でもない。
その彼女が、いま何と言ったか。
「朝ご飯…だぁ?」
眉を顰める。
聞き慣れない単語だった。
まだ、キツネに頬をつねられているような気がした。