冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
彼女の白い指の、たどたどしい動き。
カイトの許可なく、頭の中で鮮やかなムービーが勝手に流される。
しばらく、カイトは自分の心と戦っていた。
汚い言葉の博覧会だ。
顔をひん曲げて、そこらに頭をぶつけて回りたい衝動をこらえることで、更に身悶えしそうだった。
これでは、まるで病気ではないか。
彼女への気持ちが、こんなにまで自分の細胞を占拠するとは、思ってもいなかった。
いままで、診断しかねていた病気にいきなり名前がつけられて、不治の病と言われたようなものである。
いつ治るとも、どうすれば治るとも分からない。
明日、いきなり消えてなくなるかもしれないいが、このままずーっと影のように焼き付いているかもしれないのだ。
歯噛みしながらも、最後は自分の心を振り払った。
彼女との契約書を思い出したのだ。
カイトは、メイに触らない。
明確に書かれているその文書を見て、彼はネクタイの件を放置することにしたのだ。契約書の抜け穴を言い訳にして。
オレが触らなけりゃいいんだろ! チクショウ!
内心で、そう怒鳴り倒す。
それからは、ドスドスと部屋を出るのだ。
いつまでもこの部屋にいると、自分のいまの姿を思い出してしまいそうだった。
こんな、似合わない格好をしている自分を。
途中でシュウに会ったりしないように、カイトは凄い勢いで階段を駆け下りた。
冷え切った廊下の空気が、開けっ放しの胸元に触りたがる。
しかし、カイトはボタンをとめるより先に、ダイニングへとたどり着いた。
ドアを開けるなり暖かい。
一体、何時から起きてやがんだ?
面白くないことを考えてしまって、カイトは眉を顰めた。
一緒に細められた視界に、彼女の姿はない。
奥の部屋の方で音がする。調理場だ。
カイトは、でもまだ信じられない気持ちを持って、ゆっくりと歩いた。
バードウォッチング中であるかのような慎重さで。
夢でなければ――そこには。
カイトは、息を潜めて開いているドアからのぞき込んだ。
彼女の白い指の、たどたどしい動き。
カイトの許可なく、頭の中で鮮やかなムービーが勝手に流される。
しばらく、カイトは自分の心と戦っていた。
汚い言葉の博覧会だ。
顔をひん曲げて、そこらに頭をぶつけて回りたい衝動をこらえることで、更に身悶えしそうだった。
これでは、まるで病気ではないか。
彼女への気持ちが、こんなにまで自分の細胞を占拠するとは、思ってもいなかった。
いままで、診断しかねていた病気にいきなり名前がつけられて、不治の病と言われたようなものである。
いつ治るとも、どうすれば治るとも分からない。
明日、いきなり消えてなくなるかもしれないいが、このままずーっと影のように焼き付いているかもしれないのだ。
歯噛みしながらも、最後は自分の心を振り払った。
彼女との契約書を思い出したのだ。
カイトは、メイに触らない。
明確に書かれているその文書を見て、彼はネクタイの件を放置することにしたのだ。契約書の抜け穴を言い訳にして。
オレが触らなけりゃいいんだろ! チクショウ!
内心で、そう怒鳴り倒す。
それからは、ドスドスと部屋を出るのだ。
いつまでもこの部屋にいると、自分のいまの姿を思い出してしまいそうだった。
こんな、似合わない格好をしている自分を。
途中でシュウに会ったりしないように、カイトは凄い勢いで階段を駆け下りた。
冷え切った廊下の空気が、開けっ放しの胸元に触りたがる。
しかし、カイトはボタンをとめるより先に、ダイニングへとたどり着いた。
ドアを開けるなり暖かい。
一体、何時から起きてやがんだ?
面白くないことを考えてしまって、カイトは眉を顰めた。
一緒に細められた視界に、彼女の姿はない。
奥の部屋の方で音がする。調理場だ。
カイトは、でもまだ信じられない気持ちを持って、ゆっくりと歩いた。
バードウォッチング中であるかのような慎重さで。
夢でなければ――そこには。
カイトは、息を潜めて開いているドアからのぞき込んだ。