冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
ちょうど。
白い指が、白い卵を割るところだった。
ボウルに滑り落ちる黄色い残像が、カイトの網膜の中で閃いた。
夢ではなかった。
カイトは、彼女をもう一度見た。
間違いなく、あれは夢ではなかったのだ。
メイは、朝食を作っているのである。
何だか嬉しそうなメイの横顔。
ぼーっと。
カイトは、ぼーっとその様子に見とれるしかなかった。
胸がこれからハムにでもされるかのように、一瞬で糸を巻き付けられたのに気づかないまま。
今回のカイトは、音を立てたりしなかった。
フォークを落としたりしなかったのだ。
なのに、はっと気づいたかのようにメイの目が彼を見た。
驚いた目は、瞬間的に嬉しさで弾ける。
巻き付いていた糸が、絞められる番がきてしまった。
きゅううぅっっと。
顎の裏や耳たぶの下や、うなじや唇の内側やみぞおちが、酸っぱい痺れに襲われる。
レモンを、いきなり口の中に放り込まれた痺れだ。
落ち着かない、でも嬉しさでいっぱいの顔のまま、メイが何かをまくしたてている。
でも、カイトは声なんか聞こえていなかった。
フライパン娘になろうとしている彼女を、じーっと見ていた。
いや、目を離せなかったのだ。
ずっと――見ていたかった。
違う彼女に見えた。
カイトが好きだと気づくまで、彼女はこんなにキラキラしていなかったような気がする。
もっとくすんでいた。
昨日、彼の中で爆発が起きて、褐色の石が転げだしたのを知っているかのようだ。
あの時から、メイはもっと光を反射するようになったのだ。
ちょうど。
白い指が、白い卵を割るところだった。
ボウルに滑り落ちる黄色い残像が、カイトの網膜の中で閃いた。
夢ではなかった。
カイトは、彼女をもう一度見た。
間違いなく、あれは夢ではなかったのだ。
メイは、朝食を作っているのである。
何だか嬉しそうなメイの横顔。
ぼーっと。
カイトは、ぼーっとその様子に見とれるしかなかった。
胸がこれからハムにでもされるかのように、一瞬で糸を巻き付けられたのに気づかないまま。
今回のカイトは、音を立てたりしなかった。
フォークを落としたりしなかったのだ。
なのに、はっと気づいたかのようにメイの目が彼を見た。
驚いた目は、瞬間的に嬉しさで弾ける。
巻き付いていた糸が、絞められる番がきてしまった。
きゅううぅっっと。
顎の裏や耳たぶの下や、うなじや唇の内側やみぞおちが、酸っぱい痺れに襲われる。
レモンを、いきなり口の中に放り込まれた痺れだ。
落ち着かない、でも嬉しさでいっぱいの顔のまま、メイが何かをまくしたてている。
でも、カイトは声なんか聞こえていなかった。
フライパン娘になろうとしている彼女を、じーっと見ていた。
いや、目を離せなかったのだ。
ずっと――見ていたかった。
違う彼女に見えた。
カイトが好きだと気づくまで、彼女はこんなにキラキラしていなかったような気がする。
もっとくすんでいた。
昨日、彼の中で爆発が起きて、褐色の石が転げだしたのを知っているかのようだ。
あの時から、メイはもっと光を反射するようになったのだ。