冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「おめーも、ロボットじゃねぇなら、朝メシくらい食うだろうが…」

 何で、オレがこんなことを言わなきゃなんねーんだ。

 そう言いたいかのように、カイトは不承不承、言葉を続けた。

 言えば言うほど、彼の表情が険しくなっていく。

 イライラしているようだ。

 あ。

 何を言わんとしているかに、彼女は気づきかけた。

 もしかして?

 私にも、朝食を取るように言ってくれてるのかな?

 メイは、瞬きをしながら、彼をのぞき込んだ。
 しかし、仏頂面な表情は読みにくく、本当にそうなのか分からない。

「え…あ…私は、後でいただきますから」

 ありがとうございます。

 ごまかすように笑いながら、メイはその波をやり過ごそうとした。

 彼女は仕事に行っていないのだ。

 朝に時間制限があるわけではない。
 いま一緒に食べる必要はなかった。

 しかし、カイトの気には障ってしまったようだ。

 ギロッと視線が飛んでくる。

「食え!」

 そして、間違いようのない一言。

 カイトは、まだ彼女が一人では食事をしないと思っているのだろうか。

 ハルコに言われた時のように。

「あの…ホントに、後でちゃんと食べますから…」

 安心してもらおうと、メイは一生懸命な言葉で彼に伝えようとした。

 ガチャン。

 けれども――銀の刃物は放り出された。

 黄色い太陽に傷一つ入れただけで、まったく手出しもされないまま。

 その上、カイトは無言だった。

 おまけに、横顔は彼女からそらされていて、『おめーが食うまでオレも食わねー』と言っているかのようだった。

 そ、そんなぁ。
< 257 / 911 >

この作品をシェア

pagetop