冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 チクショー!!!!

 混乱する頭を押さえることが出来ず、カイトはオムレツをヤケのように口の中に押し込み始めた。パンにかぶりつく。

「あっ…」

 いきなりのその暴挙に、メイは驚いた声をあげた。

 しかし、無視してかきこむ。スープも流し込む。

 カイトは、物凄い勢いでテーブルの上を片付けたのである。
 味なんて、分かったものじゃなかった。

 手のひらで口元を拭いながら席を立つ。

 椅子が大げさな音をたてて、その勢いに抗議した。

「あの…すみませ…」

 まだ謝ろうとするメイを、ギロッと睨んだ。

 てっきり、さっきの件をまだ言及しようとしていたのかと思ったのだ。

 しかし、彼女はカイトのすぐ側まで近づいていた。

 これには驚いて、一瞬動きを止める。

 意味が違ったのだ。

 朝食が遅くなってごめんなさいということではなく、ちょっと失礼します、のすみませんだったのである。

 メイの手が――伸びてくる。

 …ッ!

 触れられた瞬間。

 身体が、まるで金属のようになった。

 曲げるのにも一苦労な、融通のきかない固すぎる金属。

 その金属板と化したカイトのネクタイを、メイは締めにきたのだ。

 触れることのできない身体が、こんなにすぐ側で。
 息づかいだって聞こえるくらい側で。

 指が伸びてきたが、しかし、ネクタイには触らなかった。

 ネクタイを飛び越して、カイトの胸に。

 ドキンッ!

 胸が跳ねる。

 彼女が何をしようとしているのか分からなかったのだ。

 指先が、カイトの、胸に当たった。

 胸に。

 分かった。

 メイは――彼のシャツのボタンをとめようとしたのだ。
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