冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ダイニングに戻ってきたら、もうオムレツは生ぬるくなっていた。

 暖房のおかげで生ぬるいで済んでいたのだ。
 もしこれが外気温なら、とっくにシャーベットである。

 もう一度、すとんと椅子に腰かけて。

 まだ、メイは朝食の続きが出来なかった。

 新たなセリフが、彼女の中に登録されてしまったからだ。

「この時間に出る…って」

 メイは、もう一度時計を見た。
 23分になった時計を、じっと見つめる。

 それって。

 じんわりと、答えがどこからかにじみ出てくる。

 それって…明日も?
 明後日も…って、こと?

 時計に向かって首を傾げてみても、アナログ時計は8時23分。
 騎兵隊長のヒゲの形。

 明日も明後日もこの時間に出るということは、もしも彼が朝食を食べるというのなら、今日と同じ時間か、もうちょっと早いくらいで間に合うはずだ。

 そういうことを――言いたかったのだろうか。

 ぽっ。

 また、心の中に光がともった。

 昨日までとは違うところに、もう一つぽつっと。

 新しい明かりだ。
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