冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 それじゃあ…。

 ハルコは、車を門の中に入れながら、呆れたように思った。

 じゃあ、あの2人は、お互い好き合っているということを知らないの?

 キッ。

 車をガレージへと回す。

 いつもこのガレージに車を入れているが、今日はちょっと違和感があった。

 車が2台ない。

 しかし、その話は聞いていた。

 車検で1台持っていかれているのだ。

 もう一台は通勤で使っているのだから、計算上は合う。

 違和感は、それではなかった。

 いつもより、もうちょっとガランとしているのである。

 あら?

 ハルコは、ブレーキを踏んで車を止めながら目を凝らした。

 緑の防水シートが、無造作にコンクリートに転がっていたのである。

 随分とやせた姿で。

 これは、確かカバーとして使われていたハズだ。

 バイクの――

 シュウが、バイクに乗るハズなどない。
 勿論、カイトの持ち物だ。

 なのに、どうしてバイクがないのか。

 いつもなら車だけがなく、バイクはあの緑のカバーの下にあるはずなのに。

 ハルコは首をひねりながらも車庫入れをすると、もう一度カバーを眺めた。

 しかし、余りの外の寒さにそれ以上の探索をあきらめて、玄関へと向かったのである。
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