冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「おはよう、メイ…今日はとってもご機嫌ね」

 さりげなく行動に目をやりながら、ハルコは心の内に触るような言葉を生んだ。

「あ…そう…ですか?」

 さっとメイの頬に、赤いものが走ったのを見逃すハズもなかった。

 照れてしまったかのように、彼女は慌てて皿を重ねるのだ。

 これは…。

 これは、絶対にカイトとの間に何かがあったのだ。

 ハルコには、そう見えてしょうがなかった。

 昨日までのメイは、もっとおどおどしていた。

 しかし、今は見違えるようだ。

 まだ、少しおっかなびっくりなところはあるけれども、古い皮を脱ぎ捨てたかのように綺麗になっている。

 女が綺麗になる理由。

 それを考えると、ハルコはうきうきしてしまった。

 こんな気持ちは、いまはそんなにたくさん転がっている訳ではない。

 ソウマと結婚する前は、よく彼にイライラしていた。
 けれども、同じくらいかそれ以上、胸をドキドキさせていた。

 彼は不意にいなくなってしまったり、半年で帰ってくるという約束を破って一年以上外国を放浪したり―― 結婚前に、いろんなことをしてくれた。
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