冬うらら~猫と起爆スイッチ~
◎
元々、古い付き合いである。
大学に入る前、高校、中学、小学。
小学4年生の時に、ソウマは隣に引っ越してきた。
『やぁ』
二階から、引っ越しの風景を眺めていたハルコに向かって、そう挨拶を投げて寄越したのが、全ての始まりだった。
小学4年生ともなると、男女差というものを空気で分かってくるようになる。
だから、隣だからと言っても、そう親しくはならないだろうと思っていた。
けれど。
ある夜、ハルコが寝ようと思ってカーテンを閉めにきたら、ソウマが屋根の上に登っていたのだ。
驚いて窓を開けると、彼が笑いながらこっちを見た。
『今日は月蝕だよ』
その言葉のせいで―― 結婚までしてしまったのだ。
結婚したからと言って、その時の気持ちを忘れてしまったわけではない。
けれども、昔のように相手の一挙一動で、胸を乱すようなことは少なくなってしまった。
そういうハルコにとって、このウキウキは懐かしくて、気持ちがよくてしょうがないものだった。
まさか、カイト絡みでそういう気持ちが来る日があるなんて。
頬を染めた顔を隠すように、メイは調理場の方へと洗い物を持っていく。
その背中を眺めながら、また今夜、夫にたくさんのことを話さなければならないと浮かれてしまったのだ。
朝は始まったばかり。
まだまだ彼女と話せることは、いっぱいあるはずだった。
「ダージリンティーでいいかしら?」
こまネズミのように片付けているメイに、ティーポットを掲げながら微笑んだ。
元々、古い付き合いである。
大学に入る前、高校、中学、小学。
小学4年生の時に、ソウマは隣に引っ越してきた。
『やぁ』
二階から、引っ越しの風景を眺めていたハルコに向かって、そう挨拶を投げて寄越したのが、全ての始まりだった。
小学4年生ともなると、男女差というものを空気で分かってくるようになる。
だから、隣だからと言っても、そう親しくはならないだろうと思っていた。
けれど。
ある夜、ハルコが寝ようと思ってカーテンを閉めにきたら、ソウマが屋根の上に登っていたのだ。
驚いて窓を開けると、彼が笑いながらこっちを見た。
『今日は月蝕だよ』
その言葉のせいで―― 結婚までしてしまったのだ。
結婚したからと言って、その時の気持ちを忘れてしまったわけではない。
けれども、昔のように相手の一挙一動で、胸を乱すようなことは少なくなってしまった。
そういうハルコにとって、このウキウキは懐かしくて、気持ちがよくてしょうがないものだった。
まさか、カイト絡みでそういう気持ちが来る日があるなんて。
頬を染めた顔を隠すように、メイは調理場の方へと洗い物を持っていく。
その背中を眺めながら、また今夜、夫にたくさんのことを話さなければならないと浮かれてしまったのだ。
朝は始まったばかり。
まだまだ彼女と話せることは、いっぱいあるはずだった。
「ダージリンティーでいいかしら?」
こまネズミのように片付けているメイに、ティーポットを掲げながら微笑んだ。