冬うらら~猫と起爆スイッチ~
12/02 Thu.-3
□63
室温と体温の差が大きすぎると、たとえ室温の方が高くても、一瞬身体が拒否反応を起こす。
カイトは、ぶるっと背筋を震わせた。
いま、確実に自分の身体に鳥肌が立ったのが分かる。
くそっ。
社長室に飛び込んだカイトが一番最初にやったのは、ネクタイが伸びようが縮もうが知ったことではない強さで、思い切り力を込めて解いたことである。
ぶら下げているのも腹が立って、それを襟からシュルっと引き抜くと、そこらの床にたたきつけた。
メイに締めてもらったネクタイではあるけれども、このネクタイそのものに価値があるわけではないのだ。
元々は、憎い相手なのだから。
朝っぱらから大失態である。
叩きつけたネクタイを、更に追い打ちに靴で踏みつけにしようとした時、内線のフォンが開いた音がした。
秘書だ。
『社長…副社長がお見えです』
事務的な一言に、カイトは眉を顰める。
ネクタイの側に立ったまま、ギロリとドアを睨んだ。
いま来るものは、何でも敵と同じ扱いになるというのに。
「おはようございます」
家でも挨拶をして、会社でも挨拶をするのか、この男は。
入ってくる副社長を、歓迎していない表情で出迎えた。
心の中は、『帰れ』『消えろ』の大合唱である。
「わざわざ遅刻してねぇか、確認しにきたのか?」
ヒマなこった。
おあいにくだったな、オレぁ遅刻してねーぜ。
内心で、シュウに向かってざまーみろと思いながら、自分の机の方へと歩き出した。
「いえ、私はそんなに暇ではありません…社長に目を通していただきたいことがありまして」
なのに。
神経を思い切り逆撫でることを平気で言うのだ、この男は。
何のために彼が、寒い思いまでしてバイクをすっとばしてきたと思っているのか。
この男に、『それみたことか』という目で見られるのがムカつくからである。
室温と体温の差が大きすぎると、たとえ室温の方が高くても、一瞬身体が拒否反応を起こす。
カイトは、ぶるっと背筋を震わせた。
いま、確実に自分の身体に鳥肌が立ったのが分かる。
くそっ。
社長室に飛び込んだカイトが一番最初にやったのは、ネクタイが伸びようが縮もうが知ったことではない強さで、思い切り力を込めて解いたことである。
ぶら下げているのも腹が立って、それを襟からシュルっと引き抜くと、そこらの床にたたきつけた。
メイに締めてもらったネクタイではあるけれども、このネクタイそのものに価値があるわけではないのだ。
元々は、憎い相手なのだから。
朝っぱらから大失態である。
叩きつけたネクタイを、更に追い打ちに靴で踏みつけにしようとした時、内線のフォンが開いた音がした。
秘書だ。
『社長…副社長がお見えです』
事務的な一言に、カイトは眉を顰める。
ネクタイの側に立ったまま、ギロリとドアを睨んだ。
いま来るものは、何でも敵と同じ扱いになるというのに。
「おはようございます」
家でも挨拶をして、会社でも挨拶をするのか、この男は。
入ってくる副社長を、歓迎していない表情で出迎えた。
心の中は、『帰れ』『消えろ』の大合唱である。
「わざわざ遅刻してねぇか、確認しにきたのか?」
ヒマなこった。
おあいにくだったな、オレぁ遅刻してねーぜ。
内心で、シュウに向かってざまーみろと思いながら、自分の机の方へと歩き出した。
「いえ、私はそんなに暇ではありません…社長に目を通していただきたいことがありまして」
なのに。
神経を思い切り逆撫でることを平気で言うのだ、この男は。
何のために彼が、寒い思いまでしてバイクをすっとばしてきたと思っているのか。
この男に、『それみたことか』という目で見られるのがムカつくからである。