冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□7
 カイトは、酒臭いシャツを脱ぎ捨てて、その辺りの床に放った。

 いつも、彼はこんな感じである。

 どうせ明日になれば、通いの家政婦が掃除するついでに拾い集めて、クリーニングにでも出すのだ。

 クソッ。

 全然穏やかではない気分のまま、苛立ちの言葉をつぶやいて、彼はソファにどかっと身体を預けた。

 天井を向いて、大きく一回息をつく。

 続き部屋のドアの向こうでは、あの女――メイが、カイトにとってイヤなものすべてを洗い流している。

 連れて帰ってきちまった。

 これまでの過程を思い出すと、どんどん彼の表情は曇っていく。

 いつもいつも、カンを一番頼りに生きてきたけれども、今回のこれは、本当に自分でも驚くばかりだ。

 連れて帰ってきて、どうしようと思ったのか。

 それすら、はっきり考えてはいなかった。

 ただ、彼女をあの場から連れ出すことばかりを考えていたのだ。

 あそこに置いておくのだけは、どうしても耐えられなかったワケで。

 そうして、海のものとも山のものともつかない女が1人、彼の部屋にいた。

 ここは、彼の家である。

 広い家に住むのが夢だった。

 マンション暮らしの家庭で育ったカイトには、コンピュータを思うように置けない、あの狭い空間が大嫌いだったのだ。

 稼いで一番最初にした大きな買い物が――この家だった。
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